『勝手にふるえてろ』~本命と2番手のあいだで揺れうごく、妄想爆発小説

小説レビュー

writer/にゃんく

 


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2017年10月に映画化された、綿矢りさの小説のレビューをおとどけします。

 

STORY

 

主人公は、江藤良香(よしか)、26歳です。中学時代の同級生への片思い以外、恋愛経験はありません。おたく期が長かったせいで、現実世界にうまく順応できないところがあります。
よしかが好きなのは、イチという男性です。イチというニックネームは、「第一本命」を略して、イチ。勝手によしかが心のなかで呼んでいるあだ名です。(本名も、ちょうどいい具合に、一宮といいます。)
イチは、学生時代でも、みんなの人気者でした。イチは、さらさらの長い重たげな前髪、横長たれ目で微笑むとちょっとずるそうに見える、ぬれた黒目がちの瞳をしています。イチ以外なら誰であろうと、はっきり言ってどうでもいい、とまで思うほど好きな男性ですが、イチ本人は、よしかの熱烈な愛情とは裏腹に、ひさしぶりで再会しても、よしかの名前すら覚えていません。
ニは、よしかの「第二」の男です。ニは、よしかにアタックしてきます。ニは、元体育会系いまはちょっとビール腹の体格で、伸びたスポーツ刈りの髪を整髪料でかためている、目鼻立ちのはっきりした、できたての弁当の底みたいなほかほかしたあつくるしいオーラの男性です。営業課に配属されていて、飲み会を主催して、よしかに接近してきます。
ある日、よしかは、ニに告白されますが、しばらく返答を保留します。
よしかは処女ですが、それをニに悟られたくないと考えています。
そして、同じ課の同僚に、男性について相談をしますが、その相談がニに筒抜けになっていることを知ると……。

 

REVIEW

イチとニのあいだで揺れうごく女性の気持ちをつづった作品です。

初出が2010年なので、1984年生まれの作者(綿矢りさ)が26歳のときの作品ですね。新人女性会社員の気持ちをつづった作品なので、当時の作者の年齢とほぼ同じ人物を登場人物にしています。綿矢りさ自身は、会社に就職した経験はないのでしょうから、「もし就職していたら、こんな感じかな?」と想像しながら書いたのかもしれません。
会社内での経理担当の女性社員として、会社での立ち位置など、違和感はありません。

毒舌も炸裂していますし、妄想も爆発しています。
この作品を読めば、綿矢りさは、かなりの部分、初期の本谷由希子を目指していたことがうかがえます。つまり、「ハチャメチャ系」です。自意識過剰の「ハチャメチャ系」。
多くの男性にとって、この書は、聞きたくない女性の本音をつづった、禁断の書と言えるかもしれません。いちど読んでしまうと、おそろしくて外も歩けなくなるかもしれません。
でも、やっぱりおもしろいですね。映画もどういうふうにしあがっているのか、気になります。

 

 

 

 


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