『川の流れのように』映画レビュー

 writer/K・Kaz

 

今回は、邦画「川の流れのように」をご紹介したいと思います。

STORY

海辺の小さな漁師町に、ひとりの女性が引っ越してきます。彼女の名前は広沢百合子。作家で、東京での生活を捨て突然この町にやってきました。
百合子は、自由奔放で、過疎が進む町にはそぐわない、都会の空気をふりまいています。
そんな彼女を、一平、ユキ、時夫、哲司、よね、しんこ 孫七など、この地に昔から暮らす老人たちは、違和感と羨望の入り交じった複雑な目で眺め、決して心を開こうとはしませんでした。
けれど彼らは徐々に、前向きに生きる百合子に影響され、それまでの消極的で閉鎖的な生活を反省し、自分の意見を表に出して暮らすようになってゆきます。
そんな折、じつは百合子の本名は春日咲子と言い、かつての網元の娘だったと分かります。百合子の家族は60年前、大嵐の日の海難事故で多くの犠牲者が出た事件の責任を問われ、町を追われるように出ていったのでした。
辛い過去を背負いながらも、百合子は故郷への想いを捨てきれず名前を変えてこの町に帰ってきたのでした。百合子の過去を知り、事件は彼女の責任ではないと説く者もいました。
しかし、家族を失った者にとっては、いくら時が流れても納得できないものがあり、やはり百合子には出ていって欲しいと言い出します。

ある日、哲司の息子の嫁が産気づいたという連絡が入ります。
運悪く、折からの暴風雨で、道路が寸断されている最中でした。
仕方なく、大きな病院のある町まで船を出すことになりますが、彼らの脳裡に60年前の海難事故の記憶が蘇るのでした……。

REVIEW

 

2000年に公開の作品です。
主役の広沢百合子を、森光子さんが演じています。
その他にも、田中邦衛さん、谷啓さん、いかりや長介さん、菅井きんさん、大滝秀治さんなど、ベテラン俳優がたくさん出演されています。

この頃には、お年寄りが主役の映画は珍しかったように思います。それだけにみずみずしく、年齢を感じさせず、周りの視線を気にしない、明るくパワフルな百合子は新鮮でした。

最初は生気のない顔をしていた町の老人たちは、突然やってきた百合子を、
「東京から来た小説家の気まぐれだ」
と否定的な目を向けます。しかし、最後には百合子に負けないくらい生き生きとした表情になります。

登場人物はみな長い人生を歩んできて、色々な経験をしてきました。それだけに些細なことでも深く心を動かされてしまうシーンもあります。
「もう若者の時代なんだから…」
と一歩引いてしまったり、逆に子供たちの意見に賛同できず、古い考えだと分かっているのに意地を張ってしまうときもあります。そんな頑固で、でもどこか可愛らしい老人たちが元気に笑っている映画は、
「老人だからと言ってまだまだ諦める事はないんだよ!自分らしく生きていいんだよ!」
と言われているようで、見ている人みんなが楽しく元気になれる感じがしました。

監督・脚本は秋元康さんで、自身が作詞した名曲「川の流れのように」が劇中で印象的に使われているのも本作品の見どころの一つです。

 

本作品の評価は星3.5とさせていただきます。

K・Kazのこの映画の評価3.5

(本サイトでの、レーティング評価の定義)
☆☆☆☆☆(星5)93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5)92点
☆☆☆☆(星4)83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3)69点~79点

 

実はこの作品はレンタルも販売もされていないようです。
森光子さんならではの魅力が存分に発揮されていて、時々、「もう一度みたいなぁ」と思い出すのですが、どうやらDVD化などはされていないようなのです。
それだけに、
「いつかリバイバル上演される機会があったら・・・」
「いつかDVD化されるかもしれない・・・」
と思い続け、再会を待ち続けている作品です。

 

 

作品情報
『川の流れのように』
監督/秋元康
出演者/森光子
田中邦衛
久我美子
谷啓
いかりや長介

上映時間/108分
製作国/日本
公開/2000年4月29日

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です