『万引き家族』CINEMA REVIEW~「傷だらけの少女は、家族になりました。」


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writer/K・Kaz

 

STORY

 

 東京の下町。高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしています。

 彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという、社会の底辺にいるような一家ですが、治の口車に乗せられた祥太は罪悪感を抱くこともありません。
「家で勉強できないヤツが学校へ行くんだ」
 と学校にすら行っていませんが、いつも寄り添って笑いが絶えない日々を送っていました。

 そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子「ゆり」を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘「りん」として育てることになります。
 祥太は、治や信代の関心がりんに向くことに最初は嫉妬しますが、そのうち納得して平和な家族の日々が続いていました。

 そして、ある事件をきっかけに家族はバラバラになる危機を迎えてしまいます。……

 

REVIEW
 

 是枝監督の作品らしく、今回も奇妙だけど温かい家族の姿を描いています。
 登場人物は、誰もが決して善人ではありません。
 治は口先ばかりでズルい部分もあり、盗みもあまり罪悪感を覚えていません。信代も金に汚くパート先のクリーニング工場で洗濯物の中に入っていたものをちょろまかしたりしています。家族にはいつも優しく接する初代も、かつて自分から夫を奪った女の家族に素知らぬ顔をして会いに行き、その度に金を貰っています。それでも実の両親に虐待されたゆりを見捨てておけず家に連れて帰り、一緒にご飯を食べて、やがては家族として暮らしはじめます。

 

 しかし、家族の終わりは突然やって来て、彼らのことが世間に知られてしまいます。彼らは他人同士が家族のふりをしていただけだったこと、「リン」こと「ゆり」を勝手に連れてきてしまったこと、万引きで生計を立てていたことが全て暴露されてしまいます。

 

 世間やマスコミがいっせいに彼らを非難する姿はとても残酷に見えました。そして、家族がバラバラになったことで、純粋で笑顔にあふれていた祥太やりんの表情が曇り、口数か少なくなってゆくのが切なくて仕方ありませんでした。
 たしかに、全てを嘘で塗り固めて暮らしていましたが、本当の家族にはなかった愛情を補うようにお互いを大切に思い、子供たちには愛情を注ぎ続けていました。
 家族と言うのは、心が通じでいなくても血や法律で繋がってさえいれば良い集団のことなのか、それとも全く関係ないけれど心で繋がって愛情を育んでいる、温かくて居心地のいい集団のことを言うのか考えさせられる作品でした。

 

 

本作品の評価は星3.5とさせていただきます。流石にカンヌでパルムドール賞を貰っただけのことはある、見応えある作品でした。 

 

K・Kazのこの映画の評価3.5

(本サイトでの、レーティング評価の定義)
☆☆☆☆☆(星5)93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5)92点
☆☆☆☆(星4)83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3)69点~79点

 
   

監督・脚本/是枝裕和 
製作国/日本
公開/2018年6月8日
上映時間/120分
キャスト/リリー・フランキー
安藤サクラ
松岡茉優
池松壮亮
城桧吏
 佐々木みゆ
高良健吾
池脇千鶴
樹木希林

 

 

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