『ナラタージュ』映画レビュー~「孤独だった私に、居場所をくれた人は、愛してはいけない人だった。」

 


 

 

writer/K・Kaz

 

今回は邦画「ナラタージュ」を紹介したいと思います。

 

STORY

 

 工藤泉は、大学二年生。
 母校である高校で、演劇部の卒業公演に出演することになります。
 これは演劇部顧問、葉山貴司の誘いによるものでした。泉は高校時代、教師である葉山に片想いをしていたのです。当時は教師と生徒という立場からお互い自らの気持ちを隠し続けていました。しかし、二人は確実に惹かれ合っていました。
 泉は、母校の卒業公演に出るために葉山と再会し、練習を重ねていくうちに彼への気持ちが抑えられなくなります。実は、葉山が妻と離婚しておらず、良くないとわかっていながらも、二人の距離は確実に近づいてゆくのでした。

 ナラタージュとは、
「映画などで、ある人物の語りや回想によって過去を再現する手法」
「映画で、画面外の声に合わせて物語が展開していく技法。回想シーンに多く使われる手法」
 だそうです。その題名の通り、物語は、雨が降っている街並みを、オフィスから眺めている彼女の回想によって進んでゆきます。
 泉は、居場所がなく閉塞感をもちながら、高校時代を過ごしていました。そんな彼女を演劇部に誘い、居場所を作ってくれたのが葉山でした。
 尊敬は、やがて恋心に変わります。
 しかし、泉はなかなか想いを伝えることができません。やっと卒業式の日に気持ちを伝えたものの、それで終わってしまいます。ここまでであれば、よくある淡い恋の物語でした。

 

 ところが、泉が大学2年のとき、突然あの葉山から電話がかかってきます。演劇部員が少なく、卒業制作の劇ができないので、力を貸してくれないかというものでした。彼女は求めに応じ、ふたりは再会します。
 このとき、ふたりは、どちらも、会ってはいけない。けれど、会いたかったという気持ちを秘めたような表情をしていました。

 

 


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REVIEW

 

 

 この物語の主な登場人物である泉、葉山、泉の恋人・小野玲二は、誰もが心の奥に秘めた思いを抱いているように思えました。
 泉は、ダメだと分かっていても、葉山への想いを捨てきれません。
 葉山は、泉の想いを知りながら、別れて暮らしている妻とよりを戻そうとします。恋人は、泉の想いが完全に自分に向いていないことが我慢なりません。
 表面上はおとなしそうに取り繕っていても、嫉妬や欲望がときどき顔を出してしまいます。それが周囲を困惑させ、事態を思わぬ方向に進ませてしまう場面が何度もありました。
 ダメとは分かっていても、相手を独占したい気持ちは無くならない。見ないようにしていても、疑惑はどんどん大きくなって問い詰めてしまわずにはいられない。

 

 高校生と教師の淡く穏やかな恋が、玲二の存在も相まって、急にドロドロと生々しくなってきます。破滅的な恋に突き進んでゆく泉の姿を見ていると、ドキドキして落ち着かない気分でした。
「これからどうなってしまうんだろう」
 と目を離すことができずに、見続けてしまうストーリー展開でした。

 

 また、泉役の有村架純さんが、無口な性格ながら、狂おしい想いを抱いて突き進む役、葉山役の松本潤さんが静かで地味な役と、これまでのイメージを一新するような演技をしていたのも印象的でした。

 

 今回の評価は星3.5とさせていただきます。
 数々の恋愛を描いてきた行定勲監督ならではのこだわりが感じられる作品でした。
 
 

K・Kazのこの映画の評価3.5

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3) 69点~79点

 

 

監督/行定勲「世界の中心で、愛をさけぶ」
原作/島本理生『ナラタージュ』
製作国/日本
公開/2017年10月7日
出演/松本潤
有村架純
坂口健太郎
大西礼芳
古舘佑太郎
神岡実希
駒木根隆介
金子大地
市川実日子
瀬戸康史
上映時間/140分

 

 


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