『おにぎり』ヘルツリッヒ


ヘルツリッヒ

 

あなたは「おにぎり」と聞いて、何を思い浮かべますか?
私にはいつも「おにぎり」と聞いて思い出す話があります。今回はそのお話をご紹介させていただきます。
これは二十数年前の名古屋で起きた、私の母のお話です。
私の母は三人姉妹なのですが、三人とも結婚し、当時は比較的近くに住んでいました。
その年の夏に祖父母と三人姉妹の家族で集まって、私の両親の家で夕食にパーティーを開こうということになりました。
久しぶりのパーティーで、両親ともに準備の段階から楽しみにしていました。前日から美味しい料理を作るための食材や飲み物を買い出しにスーパーへ行ったり、料理の下ごしらえをしたりと大忙し。そんな中でちょっと料理が足りないかなと母は思い、とあるお店におにぎりを20個注文しました。そのお店は海苔屋さんで、おにぎりも販売する地元では名の知れたお店でした。
パーティー当日の昼下がり、両親は予約したおにぎりを受け取りに海苔屋さんへ向かいました。
母が車から降りて、お店に入っていきます。感じの良い店員さんで、気持ちよく支払いを済ませ、おにぎりの入った袋を両手に持って、お店から出てきました。
お店から出て車に向かう途中、両手にずっしりと重みを感じながら、母の頭にある考えがよぎりました。
「おにぎりって……1万円もするか…?」
そう思いながら、父の待つ車へ。
「なんか…おにぎり、1万円も買っちゃったんだけど…」
父も目をギョッとさせて
「えっ?」
とおにぎりに視線を下ろします。
母が持ってきた2つの袋には、笹に包まれたおにぎりがぎっしりと詰められていました。
誰が見ても、母が注文したおにぎり20個をはるかに超えているのはわかります。
でも、きちんと20個と伝えたはず…どういうことでしょうか?
そこで、笹の包みを一つ開いてみると、そこには俵の形をしたおにぎりが5つ入っていました。そして、笹の包みを数え終えた時、その理由を悟ることになりました……。
その笹の包みの数は……20個だったのです。
もうお分かりでしょう。
つまり、そのお店はおにぎり5つで笹に包んで1個として販売していたのですが、母はそれを知らずに20個を頼んでしまい、5×20=100個のおにぎりを買うことになってしまったのです。
これはやらかした…!
両親は慌てて店員さんに事情を話すと「そうでしたか。お店で販売しますので、ご返金いたします。」と笑顔で言ってくださいました。両親はこちらの確認不十分でもあるから、半分の50個を引き取ることにしました。
当初の予定からおにぎりの数が2.5倍になってしまい、おにぎりがもはやメインとなった当日のパーティー。参加した家族がおにぎりのようにお腹が丸くなるまで食べて、帰路についたそうです。

 

 

作者紹介

ヘルツリッヒ
ライター。
時計愛好家です。
新しい時計がほしいときは、ご相談にのれますよ。

 

 

 

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