オナラで人を識別する方法

秋野 りんご

 

 

うちの家族はにぎやかだ。
というか、うるさい。すごくうるさいです。
誰が、家のどのあたりにいるのか、すぐわかります。

母は、誰かが近くにいると、ずっとしゃべっています。
よく話すネタがつきないな、と思います。
ときどき、以前聞いたことあるなってネタをぶっこんでくるから、どうやら何度か再利用している模様です。
母が、でかい独り言をいっているときがあります。ふと見てみると、母がハンズフリーで誰かと電話しています。
ケータイの使い方をよく聞いてくるくせに、そういう機能はしっかり使いこなせるのです。

反対に、父は誰かと話していることよりも、独り言をいっていることの方が多いです。
話しかけられたと思って、
「なに?」
と聞くと、意外にも、
「なに?」
という顔をされるのが、無性に腹立たしいです。
完全に自分の世界に入り込んでいます。
うがいの音も、
「わざとか?」
と思うほど大きいし、しつこいくらい長いです。

そして弟は、とにかくイライラがわかりやすく、すぐ物にあたります。
ドタンバタン、バキッ。
という音が聞こえたら、だいたい機嫌が悪いです。
まぁ、これはよくいるタイプですね。つまらない男。

そして、私はというと、物との距離感を測るのが苦手なのか、よく机や壁にぶつかります。
ドカッという音の後に、
「痛っ」
と聞こえたら、だいたい私。
たぶん、声でわかります。

こんな家族なので、トイレに誰が入っているかも、すぐわかるんです。
トイレですら、うるさい家族なのです。

母は、おならの音が変わっています。
なぜか、
「おぱぁ」
というのです。
彼女は、芸人の渡辺直美ばりの、かなりのむっちりボディです。
お尻の肉をかいくぐって(オナラが)出てくるから、こんな音なのかもしれません。
「おぱぁ」
あるいは、体型の問題かもしれませんね。
同じような体型の人でも、このような音が出るのか、視聴してみたいです。
「おぱぁ」

父のおならは普通に、
「ぶっ」
っていう音なんだけど、自分でおならをしておいて、なぜかその直後に、
「おっ」
と言います。
赤ちゃんが、自分のおならに驚くのとおなじ感覚なのかもしれません。
または、なにかコメントを言わないと、気がすまないのかもしれません。
「ぶっ」
っていう音がしてから、
「おっ」
と発します。
「なんなんだ?!」
と私などは思ってしまいます。でも、やっぱり、本人に直接聞くことはできません。
これが、乙女の恥じらいというものなのです。
「ぶっ」
と言ってから、
「おっ」。
これが私の父です。

だんだん調子にのってきましたね。
お次は、弟のおならについてです。
弟のおならは。
「ぷー」
とか、
「ぷっ」。
まあ、そんな感じですかね。
でも、毎回決まっているわけではありません。
おならをしても、ノーコメントですし。
おもしろい癖もありません。
毎回変わった音というわけでもないし。
まぁ、ふつうそうですよね。
トイレですから。

そして最後は、私のおなら。
ところで私は、おならに関して、何故こんなに熱く語りはじめたのでしょう?
しかし語りはじめたら、最後まで語らなければならないって?
そんなムチャな。
ご期待にそえず、申し訳ございません。
私のおならに関しては、もちろんノーコメント。
なぜなら、
「私おならなんてしませんから」。
と、アイドルのような宣言をしておきます。
ただ、トイレに入っているのが私とわかってしまう癖があります。

それほどせっかちだという自覚はないけれど、どうしてもパンツやズボンなんかを上げながら、体の向きを変えてしまうのです。
立って前を向いたままパンツを上げ、落ち着いて後ろを振り返って手を洗えばいいのに、(タンクの上についている手洗い場で手を洗うので)、パンツを上げている、つまり肘が曲がっている状態で方向転換するので、その肘を、トイレのドアや壁にぶつけてしまうのです。
ときどきふらついて、体ごと壁に体当たりしていたりします。
別にイラッとして壁を殴っているわけではありません。
そんなバイオレンスな性格ではないのに、夜、静かなときなんか特に、「ゴスッ」という音を響かせています。

トイレという密室で、他の人はどうやってスマートに、つまり壁にぶつからずにパンツやズボンを上げたり、整えたりしているのだろう。
私に落ち着きが備われば解決する問題なのでしょうか?

 今日も悩みながら、トイレから、「ゴンッ」という音を響かせています。

おしまい

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