『ナミヤ雑貨屋の奇跡』映画レビュー~「2012年 一軒の廃屋に迷い込んだ若者」

 

writer/K・Kaz

 

 今回は、現在劇場公開中の邦画『ナミヤ雑貨屋の奇跡』をご紹介したいと思います。(一部ネタバレアリ)

 

STORY

 

 2012年。

 敦也は、幼なじみの翔太や幸平と、強盗を働きます。三人が育った養護施設「丸光園」は近々売り払われてしまうと言う話を聞いたのです。そこで、その会社の女社長を襲い、金品を強奪したのです。

 ところが、逃走中に車の調子が悪くなり1軒の廃屋に逃げ込みます。そこは、かつて町の人々から悩み相談を受けていた「ナミヤ雑貨店」という雑貨店。

 現在は、もう廃業し空き家になっている店内で、三人は身を隠して一夜を過ごすことに決めます。

 

 深夜、シャッターの郵便受けに何かが投げ込まれます。郵便受けのところに行ってみると、投げこまれていたのは、悩み相談の手紙でした。しかも、それは1980年に「魚屋ミュージシャン」が書いたものでした。

 32年の時を超えて届いた手紙には、
「このまま夢を追うべきか、実家の魚屋を継ぐべきか」
 と悩みがつづられていました。

 敦也たちは戸惑いながらも、当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くことにします。
「世の中はそんな甘いものではありません。夢を捨てて家業を継いだ方がいいでしょう」
 と書いた返事を、昔のルールに従って牛乳入れに入れました。すると、すぐに魚屋ミュージシャンから次の手紙が送られてきたのですそれに返事を書くとまた次・・・と続いてゆきます。
 そして、三人が色々な人たちからの手紙に返事を書いているうち、相談者達と敦也・翔太・幸平の三人、そして丸光園との関係が明らかになってゆきます。

 

REVIEW

 

 アドバイスぐらいで人生は変わらないかもしれません。

 それでも悩んで悩んで、相談者は最後の望みを託して手紙を投かんします。

 その手紙に答え続けたナミヤ雑貨店の店主・浪矢貴之は、困った人を最後の最後、ギリギリの崖っぷちで助けてくれるヒーローだったと言えるのではないでしょうか。

 時には、
「自分の助言が本当に役立つのだろうか?」
 と悩みながら、顔さえ知らない誰かの相談に真摯に答え続ける浪矢の姿には胸を打たれました。
 人生の分岐点に立った時、こんな人がそばにいてほしいと思いました。

 

 また、これは人生に迷っている最中の若者三人に大切なことを教えてくれる話でもありました。最初は親がいない自分たちの境遇を嘆き、相談者を「甘ちゃんだ」「贅沢な悩みだな」と切って捨てようとします。

 しかし、手紙をやり取りしてゆくうちに、その考えが間違っていたことに気付きます。誰もが見えないところで辛い思いをし、悩みを抱えながらも努力して前に進もうとしていると知ったからです。

 そして、人の縁は繋がりあっていて、誰もが無関係ではないとも思いました。当然ですが、三十年前にはネットもスマホもありません。今は悩みを書き込めば不特定多数の人が答えてくれるサイトもあります。メールを使えば文書は瞬時にやり取りできます。

 しかし、そんなものがない時代の、人から人へ気持ちをこめてやり取りされている直筆の手紙を見ていると、
「こんなコミュニケーションもいいものだな」
 と温かい気持ちになりました。

 

 本作品の評価は星3.5とさせて頂きます。
 心に響く良い作品ですが、良くも悪くも予想通りと言う気がしたので少し減点させていただきました。

K・Kazのこの映画の評価3.5

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3) 69点~79点

 

 

執筆者紹介

 

K・Kaz
石川県在住の男性です。
週末には、映画を5~7本ペースで観ていらっしゃるそうです。
にゃんくがリクエストした映画は、ほぼ全部ご覧になっていらっしゃるという、すごい方です。
淀川長治さんが生きていれば、互角以上の戦いができるのは、きっとK・Kazさんだけでしょう。

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