『恋人たち』映画レビュー


恋人たち

 

writer/K・Kaz

 

STORY

 

東京の都心部に張りめぐらされた高速道路の下。橋梁点検作業員のアツシが橋梁のコンクリートに耳をぴたりとつけ、ハンマーでノックしています。機械よりも正確な聴力を持つ彼の仕事は、ノック音の響きで、破損場所を探しあてることです。

アツシの仕事は、同僚からも信頼されています。
しかし、彼は数年まえに、愛する妻を、通り魔殺人事件で失った過去がありました。
その重くのしかかる過去のために、一時的に働けなくなり、健康保険料も支払えないほどに貧しく荒れ果てた生活を送っていました。
郊外に住む主婦・瞳子は自分に関心をもたない夫と、そりが合わない姑と3人で暮らしています。

同じ弁当屋に勤めるパート仲間と共に皇族の追っかけをすることと、小説や漫画を描いたりすることだけが楽しみです。

ある日、パート先にやってくる肉屋の男とひょんなことから親しくなり、瞳子の平凡な毎日は彩を持ちはじめ、刺激に満ちたものとなってゆきます。
企業を対象にした弁護士事務所に務める四ノ宮は、完璧主義者。
たとえ誰かに階段から突き落とされて足を骨折しても、エリートである自分が他者より優れていることに疑いをもたず、高級マンションで一緒に暮らす同性の恋人への態度も常に威圧的で、心が離れてゆく事にも気づきません。
そんな彼にも、学生時代から秘かに想いを寄せている男友だちがいますが、ささいな出来事がきっかけで誤解を招き、溝が出来てしまいます。

 

 

REVIEW

 

主人公3人の姿を通して描かれるのは、満たされない気持ちを抱えながら、それでも何とか日々を生きてゆこうとする、ごく普通の人たちの姿です。
誰にでも欠けているものはあって、周りのちょっとしたことや言動に傷ついたり、端から見ると訳の分からないことで怒ったりして、見ていて共感できる部分も多いように思います。
とくに、奥さんを理不尽に奪われたアツシの怒りや閉塞感は凄まじく、こっちまで息が苦しくなる程です。
3人を演じているのは全員が殆ど演劇経験はなく、ワークショップを経て監督に見出された人たちです。
それだけに魂のこもったリアルな「手に入らない物に恋い焦がれる人たち」=「恋人たち」を見せてくれました。
脇を固める俳優陣も良く、悪い人間ではないが主演の三人をじわじわと追い詰めたり、すんでの所で気持ちを救ったりと絶妙です。

この作品の評価は星4つとさせて頂きます。重いテーマを含んでいて万人受けはしないかなと思い、少し悩んで厳しめの評価です。
しかし、興味があったら是非見てほしい1作です。
また同じ橋口亮輔監督の作品で、生まれてくるはずだった子供を失ったことから始まる夫婦の亀裂と再生を描いた「ぐるりのこと」も見てほしいです。

 

 

K・Kazの「恋人たち」の評価4

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4,5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆(星3) 69点~82点)

 

 

監督/橋口亮輔
出演者/篠原篤
成嶋瞳子
池田良

公開/2015年11月
上映時間/140分
製作国/日本

 

 


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