『憂国』(三島由紀夫/著)小説レビュー~世界のミシマ文学の真骨頂

 

三島由紀夫(1925~1970)

 

 

 

 

文/にゃんく

三島由紀夫のイラスト/フリーターちゃお

 

 

 

今回は、三島由紀夫の短編のご紹介です。

 

『憂国』。

 

 

1954年『潮騒』発表、

1956年『金閣寺』発表、

1961年『憂国』発表。

 

 

『憂国』は、三島由紀夫36歳の頃の作品です。

 

STORY

 

武山中尉は、近衛歩兵一連隊勤務の若い中尉(30歳)です。

結婚してまだ間もない中尉の夫婦は、周囲が感嘆の声を漏らすほどの美男美女のカップルでした。(武山夫人は、23歳)。

 

中尉は、軍隊勤務の身なれば、日頃から、妻に、いつ何どき命の絶たれるときがくるかもしれないと、その心がまえだけはしておくようにと、言い聞かせていました。

 

昭和11年2月26日の朝、雪の暁闇に吹き鳴らされた集合喇叭が、中尉の眠りを破ります。すなわち、二・二六事件が勃発し、中尉は跳ね起きて無言で軍服を着て、妻のさし出す軍刀を佩して、明けやらぬ雪の朝の道へ駆け出していき、その後28日の夕刻になるまで、帰りませんでした。

 

中尉が自宅に帰ってきたのは、2・26事件の反乱軍を打つための出動をひかえ、いったん準備のために帰宅が許されたときでした。

しかし、帰宅した中尉は、妻に反乱軍を打つことはできないと打ち明けます。すなわち、反乱軍のなかには、中尉の親友たちが数人含まれており、彼らは、中尉が新婚であったために、中尉を反乱軍に誘うのを自重したと思われたからです。

中尉は、親友たちが混ざっている反乱軍を打つことはできない、今夜切腹する、と妻に打ち明けます。新妻も、「お供します」と中尉にこたえ、ふたりは真近に迫った死をまえに、普段よりいっそう激しい交わりを交わします。そして、ふたりは、死を迎える準備をするのでした・・・。

 

 

REVIEW

 

物語というようなものはほとんどないと言っていいと思います。

226事件という状況設定と、あとは単に切腹の様子を息の長い描写で描いたものとも言えます。しかし、描写だけで、そこに深い意味を浮かび上がらせているのはさすがです。

 

 

新潮文庫の解説は、三島由紀夫自身が書いています。

そこで、三島由紀夫は、『憂国』について、

<私は小説家として、『憂国』一編を書きえたことを以て、満足すべきかもしれない。かつて私は、「もし、忙しい人が、三島の小説の中から一編だけ、三島のよいところ悪いところすべてを凝縮したエキスのような小説を読みたいと求められたら、『憂国』の一編を読んでもらえばよい」と書いたことがあるが、この気持には今も変りはない。>

と書いています。

作品自体は、30ページほどのものですから、すぐに読めます。

 

 

『憂国』はまさに三島文学の真骨頂という感じです。

  他の誰にも書くことはできないでしょう。

  

読む者に衝撃を与えずにはおかない、三島文学の真骨頂、『憂国』。

是非いちどは読んでみてください。


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執筆者紹介

にゃんく

にゃんころがりmagazine編集長。
X JAPANのファン。カレーも大好き。

 

 

 

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