『日出処の天子』(山岸凉子著)コミックレビュー


【漫画全巻セット】【中古】日出処の天子[文庫版] <1〜7巻完結> 山岸凉子【あす楽対応】

 

 

writer/にゃんく

 

 

STORY

時は西暦583年、物部氏と蘇我氏が権力闘争を繰り広げていた時代です。
両氏は、誰を大王(おおきみ)に立てるかなど、政治的な案件のほとんどすべてを、いかに自らの陣営に有利に働くかという観点から決めようとし、お互い勢力争いをしています。
そのような中、蘇我氏の惣領息子である14歳の蘇我毛人(えみし)は、ある日、水浴びをする美しい女童(めわらべ)に出会い、心惹かれるようになります。
しかしそれは女童ではなく、10歳になる厩戸(うまやどの)皇子、(のちの聖徳太子)であることがわかります。
10歳ながらに、大人を翻弄するほどの頭脳をそなえ、人望も篤い厩戸皇子の魅力に惹かれていく毛人。一方、厩戸皇子も、毛人を強くもとめるようになります。
暗殺、戦、血なまぐさい策謀、知恵比べ、恋愛、そして結婚……。
豪族側の毛人、朝廷側の厩戸皇子という立場をこえて、運命的な荒波をのりこえながら、二人は何処へむかうのか。
まったく新しい息吹をふきこんだ、山岸凉子版・聖徳太子です。

 

 


日出処の天子 完全版 全巻セット(1-7巻 全巻)/山岸 凉子/メディアファクトリー

 

 

REVIEW

1980年~84年にかけて連載された山岸凉子の歴史漫画です。
戦後漫画史に残る傑作と評価される本作です。
まず、おもしろさという点で、バツグンです。
名前だけは有名な、けれど詳しいことはほとんど知らない聖徳太子という人物のことを、読んだあとにこれほど親近感を感じさせる書物は他にありません。
厩戸皇子はひそかに毛人に心を寄せています。そして当の毛人も、美しい容貌の厩戸皇子に心惹かれますが、やはり同性ということで、最後の一線を超えようとしません。
次から次へと発生する問題に、類いまれな頭脳と不思議なちからを駆使して次々と解決していく厩戸皇子。
皆からその才能を崇められ、慕われてもいた厩戸皇子。その皇子が、どのような激しい苦悩を内に抱えていたか。

 

そんな皇子の恋愛の行方はどうなるのか? 

 

文庫版で7巻までのボリュームある作品ですが、読み終わっても、まだまだ続きを読んでいたいと思わせる傑作です。

 

女性作家が描いた聖徳太子ということで、とてもかわいらしい聖徳太子となっています(長い髪に、花がむすんであります)。
性格的にも、女性的というか、なかなか冷酷な一面も併せ持っている山岸版・聖徳太子です。
けれど、読み進めるにしたがって、だんだん彼のことがかわいそうになってきます。
登場人物がかなり多く、描き分けるのは大変だったと思われます。

 

これだけのボリュームと質をあわせもった作品は、そうあるものではないのではないでしょうか。
史実にストーリーを上手に重ねながら、のびのびと、躍動感のある作品を完成させた作者に、拍手をおくりたい気持ちになりました。
終わり方もクールです。思わず、「そう来るか」とウナッてしまいました。
講談社漫画賞受賞作です。一読をおすすめしたい作品です。

 

 

 

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