古今東西の昔話や童話、神話を著者が換骨奪胎してより残酷な調理をした読み物です。
私も昔話とか童話は好きでよく読みます。
著者に言わせれば、新しい児童文学は退屈で、面白い童話などとは違うそうです。児童文学は「大人が子供を演じながら書いたもので、子供っぽい稚拙な文章でくどい描写が続き、まるで長い悪夢さながらに退屈」であると作者は言います。
私もそのような経験をしたことがあるので納得できます。
この本に収められた話は誰もが知っている「浦島太郎」や「カチカチ山」などの話もありますが、浦島太郎は玉手箱を開けても老人にはならない代わりに永遠に独り者として生き続けるという地獄を生きなければなりませんし(ネタバレのため詳しくは言いませんが)、カチカチ山では狸を殺して狸汁を作ったお婆さんに対し、お爺さんは「狸汁が変な味がする」と言って、お婆さんが本物のお婆さんではなく、狸の化けたものではないかという疑いを向けることから悲劇は起こります。
この残酷童話は、大人が読む大人の童話という感じで、格調高い文章により童話世界を生き生きと体験でき、同時にオリジナルの童話とは違った結末も楽しませてくれます。
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