ロイヤルクラウン

白と青の装飾が施された
王様の冠
彼はその冠があまり好きになれなかった
それ故 マントを翻し
城を飛び出た

彼は世界の8割を所有していたが
なによりも自由を愛した

どんな持ち物も
重荷でしか無い時もある
地位や名誉には無頓着だった

杖を翳し
光を降らせ
そこに干ばつがあれば
雲を呼んで
緑を愛でた

ただ自分のためだけであって
人に感謝される謂れはない

彼を彼たらしめるものは
ただ無欲であったこと

元々豊かな彼にとって
どんな品物もお金も
なんら魅力ではない

ただ一つだけの欠点は
愛を知らないことだった

それから幾年過ぎて
生まれて初めての恋をする
美しく気高い町娘である

彼は詩人でもあった
彼は光と光の影を
讃えた韻を贈った

彼女は詩や歌に興味がなく
次第に彼は詩や歌を歌うことを
忘れていった

なによりも
彼女と共有できる時間を
大切にし
ただひたすら彼女を笑わせることに
必死だった

然し仲睦まじい二人に突然の別れが訪れる
彼女が病に倒れたのだ

彼は王宮に戻り
彼女を助けるため
王様の冠を取りに行くが
既に次の王様のものとなっていた

頭を深々と下げ
人助けのためだと
嘆願するが
一蹴され泣く泣く城を出た

途方にくれる彼に
転機が訪れる
彼女の幸せを望み
健康を望むのならば
もう二度と会えなくとも
構わないかと
一人の老人に問われる

彼は
「勿論だ。彼女さえ元気で居てくれれば、私は例えどんな艱難な路も進む覚悟だ。」

老人が答える
「よろしい。ではこれより遥か西に進みなさい。そこで飢饉や病気に苛まれてる人々がいる。助けてあげなさい。さすれば、彼女は、息災に生きられるだろう。」

彼は一度だけ頷くとそのまま西へ一目散に駆けて行った

一ヶ月程進んだ先に小さな村があった
その村は奇病が蔓延し
今にも滅んでしまいそうだった

彼は献身的に村の人々を看病し
やがてその真心を尽くす内に
かつての王冠以上の力を取り戻していた

その結果村の奇病は次第に収まり
やがて病気は終息に向かった

彼は願った
私が一生の内に行ける場所には限りがある
だからこの力を
正しく扱えるもの皆んなに渡したい

すると晴れ渡った空に
無数の雲の無い虹がかかり
清き心の持ち主に
彼と同じ力が宿った

余談だが
この時彼の愛した彼女は
この力を受け取り
村の人々の役に立って
幸せに暮らしたそうだ

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