小説レビュー『クリムゾンの迷宮』貴志祐介


クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

 

〈あらすじです〉


数名の男女が、火星と呼ばれる場所に集められています。そこは本当の火星ではありませんが、火星を模した場所です。どうやら日本ではありません。でも、そこに集められた男女には、そこが地球上のどの場所なのか分かりません。薬を盛られたらしく、皆ここに連れて来られるまでの記憶が定かではないのです。

彼らはそれぞれ、目覚めるとそばにあったゲーム機に表示されるガイドに従って、東西南北の進路に別れて進みます。北に行けば情報を得ることができ、南に行けば食糧を、東に行けば武器、西に行けば護身用のアイテムを入手することができます。

会社を首になり、無職で妻にも逃げられた藤木という男は、藍という30代の女性と北へ行くことにします。藤木ははじめ、食糧を得るために南へ行こうとしていたのですが、藍という女性と知り合って、彼女の提案で北へ行くことにしたのでした。なぜなら、こういう場合、はじめの選択が非常に重要になる、このゲームの主催者は、情報という、一見、価値のないアイテムを提示しているが、価値のないと思われるものにこそ、大切なものが隠されているのではないかと思ったからです。

その予想は的中します。藤木たちは、このサバイバルな場所で空腹を抱えていましたが、北のルートに行ったおかげで食糧を得る方法や、罠をしかけて生き残る方法を入手することができます。さらに、一冊のゲームブックを手に入れます。ゲームの世界はこの火星の場所と似たような状況が描かれていて、選択肢によっては、主人公が化け物に食い殺されたりするのでした。そして、そのゲームブックにあるのと全く同じように、藤木たちは、この場所で、お互い殺し合わなければならないことを知ります。そして、勝ち残った者だけが賞金を得て帰還することができることを……

 

 

 まず、ゲームブックに全てが書かれていて、藤木たちの運命がその通りに運んでしまうっていう設定がすばらしいですね。

それは『百年の孤独』に出てくる予言書に似ています。『百年の孤独』では、何代もの家族の歴史が、はじまりから終わりまで、すでにある書物に書かれていて、家族の歴史はただその書物に書かれたことをなぞっていくことになります。

この作品が良かったので、次は『黒い家』に挑戦してみようと思います。

 

 貴志さんはもの凄くいろんな事を調べてもいますね。蛇の種類だとか、罠だとか、オーストラリアで食用できるものだとか、バセドー病だとか……。こういう具体的な知識などで、読者はぐんぐん物語の世界に没頭できるように書かれています。

 

 

 

レヴュー執筆者紹介

にゃんく

にゃんころがりmagazine編集長。
X JAPANのファン。カレーも大好き。

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