小説レビュー『狭小邸宅』新庄耕


狭小邸宅 (集英社文庫)

 

家を売るのが仕事の、ある不動産屋のサラリーマンが主人公のお話です。

このサラリーマン、はじめは全く家が売れません。

それで、上司に罵倒されたりしながらも、ある偶然が重なって、店舗を代表するエースに成長していきます。

 

私も家捜しなどはしたことがありますけれど、不動産屋さんに連れ回してもらったことを思い出してしまいました。

 

で、あの時、何件か物件を見せてもらったけれど、あれは「まわし」だったのかなあ、なんて回想したりしました。

「まわし」というのは、本命の物件をお客さんに買わせるために、前もって布石の物件を見せておくことです。

 

この小説を読んでいると、不動産屋さんで家を買うのがおそろしくなってくるかもしれません。

純文学的な「深さ」はあまりないかもしれませんけれど、取材を丁寧にしているようで、読んでいて、タメになることは間違いないと思います。

 

主人公が上司に、お客さんに必ず物件を買わせろ、と言うのですが、それは作品内では「お前、必ずあの客をぶっ殺せ」などと表現されています。

 

また、不動産屋さんのノルマが凄くて、まあ、何処の会社だって多かれ少なかれノルマというものの存在はあると思うのですが、この作品では、販売実績の低調なものには、上司が手を出したりします。私は、この描写は、本物の不動産屋さんではあるかどうか分かりませんけれど、迫力があるので、実際にあることなのだなあと思ってしまいました。

 


狭小邸宅 (集英社文庫)

 

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