『アヒルと鴨のコインロッカー』映画レビュー~「近所に住むプータン人のために、本屋襲撃」

 

writer/K・Kaz

 

今回は、邦画『アヒルと鴨のコインロッカー』をご紹介したいと思います。

 

STORY

 

 

大学入学のために仙台へ引っ越してきた椎名。ボブ・ディランの「風にふかれて」をくちづさみながら新居の片づけをしていました。すると同じアパートの河崎と名乗る男が、
「ディランだ」
と声をかけてきます。
そして河崎は、初対面の椎名に向かって、このアパートにはブータン人のドルジという留学生がいると教えてくれました。
ドルジは一昨年前、恋人だった琴美がいない悲しみから、部屋に閉じこもっているらしいのです。
そこで河崎は、
「ドルジを元気づけるために辞書をプレゼントしたい。辞書は厚くて立派なやつがいい。広辞苑を奪ってやるんだ」
と言いだしました。
唖然とする椎名に、河崎は、
「本屋を襲って盗まないか?」
と誘ってきます。もちろん、訳の分からない申し出に、尻込みする椎名でしたが、河崎の巧みな話術にのり、気づいたら本屋襲撃に加担してしまっています。

店の中には河崎が入り、椎名は裏口の見張り。
「風にふかれて」
を3回唄ったら、裏口のドアを一回蹴るのが役目でした。首尾よく襲撃は成功しますが、奪ってきたのは「広辞林」でした。

ここで時間は2年前にさかのぼり、ペットショップに務めている琴美(ことみ)との話になります。彼女は店から逃げた犬を捜しに、ブータンから来た留学生・ドルジと一緒に町を歩いていました。
ドルジと琴美は半年前に出会い、アパートで同棲している状態です。ドルジは大学の研究室で勉強していますが、片言の日本語しかしゃべれませんでした。琴美は主に英語でコミニュケーションをとり、河崎がドルジに日本語を教えていました。河崎は琴美の元カレでした。別れた後も琴美とは友達として付き合いがあり、何故かドルジとは気が合うのでした。
結局犬は見つかりませんでした。琴美は、ちょうど仙台市内で頻発していた動物虐待犯に連れ去られたのかもしれないと疑っていました。

再び、話は現在に戻ります。本屋を襲撃した椎名は次の日、事件として報道されないことを不審に思います。本屋に行って店員に聞いてみると、
「店長のドラ息子が暴れただけでしょう」
と気にしていない様子でした。悶々とした日々を送る中、椎名はバスの中で琴美が勤めていたペットショップの店長・麗子と出会います。河崎の事を話すと、
「彼の話を信じてはいけない」「あなたは彼らの話に途中参加している」
とだけ告げて立ち去るのでした。

 

 

話はまた2年前に。夜、ドルジと歩いていた琴美は、動物虐待犯らしき3人組を見つけます。しかも向こうも気が付き、襲われかけます。何とか逃げたものの、琴美は学生証を落としてしまったことに気づきます……

 

REVIEW

 

 

ベストセラー作家・伊坂幸太郎のデビュー作を映画化したものです。
真面目で純粋なドルジ。
女たらしでいい加減だけれど優しい心を持っている河崎。
真っすぐな心の持ち主で、思った事を行動に移さないと気が済まない琴美。
河崎に振り回されっぱなしの椎名。
彼らが織りなす物語は、最初はコメディのようです。しかし、じつは、色々な伏線が張りめぐらされており、段々と深くなって心に染みこむ話になってゆきます。
話のところどころに出てくる言葉が印象的です。
「悲劇は裏口から起きる」
「アヒルと鴨の違いって、広辞苑で調べればわかるかな?」
「あなたは彼らの話に途中参加している」
これらが後々に意味を持ってきます。
実生活でも、
「ここは気を抜いてはいけない。そう“悲劇は裏口から起きる”だ」
と使ってしまう程、人生の教訓を含んだ言葉が詰め込まれています。
ジャンルで言えばミステリーですが、従来のものとは雰囲気の異なるドラマ性と意外性です。

見る人によって笑えたり、泣けたりと反応も様々です。伊坂幸太郎の持ち味が堪能でき、一気にファンになってしまう作品です。

 

本作品の評価は星4つとさせて頂きます。
独創的なストーリ展開で、色々と考えさせられます。見終わった後にすぐ原作を読んで細部を知りたくなったのを覚えています。

 

 

K・Kazのこの映画の評価4

 

 

監督/中村義洋
原作/伊坂幸太郎
製作国/日本
公開/2007年
上映時間/ 110分
出演/濱田岳
瑛太
関めぐみ

 


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writer/K・Kaz

 

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