『ゲノムの国の恋人(作者/瀬川深)』小説レビュー


ゲノムの国の恋人 (小学館文庫)

 

writer/にゃんく

 

 

瀬川深の長編小説『ゲノムの国の恋人』を読みました。

 

STORY

 

主人公のタナカは、バイオテクノロジーの研究者です。遺伝情報解析会社に勤務しています。

ある日、タナカは、ある男から声をかけられます。

それは、ある東アジアの独裁国家で、タナカのスキルを生かし、秘密のプロジェクトに参加しないかというお誘いでした。

そのプロジェクトとは、独裁国家の若き次期絶対権力者の花嫁選び。つまり、タナカは、民間の仕事ではめぐりあえないような好待遇の中で働くチャンスを得ます。何億円もかかるような研究施設に囲まれ、ある目的のために、日々贅沢な研究を続けることになったタナカ。

タナカが与えられた極秘任務とは、花嫁候補7人の遺伝子情報を解析し、次期絶対権力者に最もふさわしい花嫁が誰かを探り当てることでした……。

 

REVIEW

 

著者は、医学博士でもあり、作家でもある瀬川深。

小学館文庫の扉ページでは、現在イエール大学で遺伝学・神経生物学研究に携わりながら、執筆活動を行っている、とあります。

著者はまさにこの小説が正面から扱っている(遺伝)というテーマについての専門家と言えます。

 

東アジアのある国を想起させる独裁国家で、その跡継ぎと面会したタナカは、テレビゲームにふける若き跡継ぎの姿を目撃し、唖然とします。

また、特定の花嫁候補を有利にするために、タナカの研究結果に横やりを入れてくる独裁国家の幹部たちに手こずらされたりもします。

遺伝情報の解析作業を続ける毎日ですが、タナカ自身も、ある日出会った魅力的な女性兵士と恋に落ちます。

そして、若き絶対権力者の遺伝情報を解析した結果、タナカ自身は、知ってはならない驚愕の事実を目の当たりにします。……

 

紛糾する独裁国家の勢力争い。

タナカに差し向けられる暴力の魔の手。

果たして、タナカは無事に日本の地に帰国できるのか?!

 

正確な科学的事実が、ダイナミックなストーリーに説得力をあたえています。

科学×文学が見事に融合した、全く新しい小説と言えるでしょう。

太宰治賞受賞のデビュー作『チューバはうたう』で、みずみずしい詩的イメージを描きあげた著者ならではの、長編小説です。

 

 


ゲノムの国の恋人 (小学館文庫)

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レビュー執筆者

writer/にゃんく

1979年、大阪生まれ。『にゃんころがり新聞』編集長。
カレーとXJapanが好き。

 

 

 

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