今回は邦画「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」を紹介したいと思います。
writer/K・Kaz
STORY
絶対的な味覚を持つ料理人・佐々木充は、「最期の料理人」として、顧客の「人生最後に食べたい料理」を創作して収入を得ていました。天才的な料理の才能を持ちながら、佐々木の関心は料理だけで、それ以外の感動や人の情に興味を持とうとはしませんでした。
ある日、佐々木のもとに、中国から依頼が来ます。依頼主は、中国料理界の重鎮・楊 晴明。かつて楊が助手をしていた日本人料理人・山形直太朗が作り上げたという、“大日本帝国食菜全席”のレシピを再現する仕事が舞い込みます。
1933年、満州に降り立った山形直太朗と妻・千鶴。
山形は、軍部の三宅太蔵少将から、大日本帝国が掲げる民族の融合を象徴するような、世界中の料理を融合させた究極のコース料理“大日本帝国食菜全席”を作るように命じられます。山形は助手として雇われた若い頃の楊、日本人料理人の鎌田正太郎と共に人類史上誰も見たこのない豪華な料理を作り上げる決心をします。
しかし、苦心の末に山形が作り上げたレシピは、時代の波に飲み込まれてゆくのでした。
そして現代、レシピを探し求めて佐々木充は、助手だった鎌田や、かつての同僚の家族から話を聞いて回ります。
そして、山形が自分と同じように絶対味覚を持ち、それ故に周囲と相容れることができずに苦悩していたことを知るのでした。
REVIEW
「ラストレシピ」と言うタイトルの通り、この映画には数々の料理が登場します。
民族の融合をテーマにした料理は、どれも独創性で驚きの連続です。
調理の過程を経て出来上がる一皿は美しく、立ち上る湯気が、画面越しに匂いまで運んでくるようです。
思わず、
「うわー、食べたーい」
といってしまいそうになります。
見どころは、それだけではありません。
主人公の佐々木充は、天才的な味覚を持っています。
しかし、それ故に、料理に妥協できません。
「料理に愛情は必要ない。素晴らしい料理は、孤独に自分と戦った末にできあがるものだ」
という考え方の持ち主です。
そのために、周囲から見はなされ、自分の店がつぶれて借金を背負ったために、更に心を閉ざすようになってしまいました。
しかし、70年前に大日本帝国食菜全席を作り上げた山形直太朗の人生を知るうちに心が揺らいでゆきます。
山形もまた天才料理人で、理想を追い求めて孤立していました。しかし、それでは真に素晴らしい料理を作り上げることはできないと気付いたのです。
中国人助手の楊や、日本から連れてきた鎌田の可能性を信じ、家族を想う気持ちを込めて究極のレシピを作り上げます。
その料理は、混迷の時代を越えて、人の心を、国を、世代を繋げてゆきます。料理だけでなく、レシピの行方を追う謎解きの物語でもあります。
この作品の評価は星4つとさせていただきます。
K・Kazのこの映画の評価4
壮大な歴史ロマン、芸術的な料理に感覚を刺激される作品、友情や家族愛の温かい絆を感じられる物語と、見る人によってさまざまな楽しみ方ができる素敵な映画だと思いました。
監督/滝田洋二郎
原作/田中経一
製作国/日本
公開/2017年11月3日
出演/二宮和也(嵐)
執筆者紹介