writer/K・Kaz
今回は現在公開中の洋画「女神の見えざる手」を紹介したいと思います。
STORY
主人公エリザベス・スローンは、その世界では同業者から畏敬の念を持たれるほど有能なロビイストです。彼女は引き受けた依頼をどんな手を使ってでも成功に導いてきました。
そんな彼女にライフル協会から、
「世論を、銃規制緩和の方向に向かわせてほしい」
と依頼があります。しかし、スローンはその依頼を一蹴します。
さらには、銃規制の強化をすすめるロビイスト会社に移籍し、ライフル協会と真正面から対立することになります。
相手は、圧倒的な資金力と政治的影響力を持つライフル協会と、彼女の手のうちを知っていているかつての仲間たちです。
そんな強力な相手を敵に回しても、スローンは一歩も引かず、同僚さえも騙し、メディアや政治家を操って世論を誘導してゆきます。
しかし、敵は政治家を動かして公聴会を開かせ、スローンの乱れた私生活までも暴き立て、銃規制強化の動きを潰そうとしてくるのでした。
REVIEW
今や「世論」はどんな武器よりも強力で、世界をあっという間にひっくり返すこともできる程の力を持っています。その世論を操る力を持つロビイストは、一国の大統領さえその影響力を恐れる存在です。
中でも主人公のエリザベス・スローンは飛び抜けた能力の持ち主で、自身が語った、
「ロビイングは予見することだ」
「敵が切り札を使ったあとに、自分の切り札を出す」
と言う信念どおり、先の先を見越して戦略を次々と繰りだしてきます。
そのやり方は、仲間さえも騙し、法も人情も無視した、「非常」で「際どい」ものです。
そのため、スローンは勝利と引き換えに信頼を失ってゆきます。
しかし、そんな人並外れた行動の原動力は、銃社会をどうにかしたいという熱意よりも、自分のキャリアや能力を世間に誇示したいという野望です。それだけに他人の気持ちを蔑ろにすることに迷いも罪悪感もありません。
そんなモンスターによって、絶対に有利と思われたライフル協会の状況は次々とひっくり返されてゆきます。
そんなふうに全身全霊をかけて仕事に取り組むスローンの私生活は、ボロボロで睡眠導入剤が手放せず、孤独な心を埋めるためにエスコートサービスを何度も利用しています。
それでも顔色も変えることなくブレない姿は、冷血そのものです。世論を思い通りに動かすため、現実の世界でもこんな駆け引きが行われているかもしれないと思うと恐怖さえ感じました。
この作品の評価は星3.5とさせて頂きます。上質の頭脳戦が堪能できると共に、アメリカが抱える銃規制問題の根深さを感じられる作品でした。
K・Kazのこの映画の評価3.5
作品情報
『女神の見えざる手』
監督/ジョン・マッデン
出演者/ジェシカ・チャステイン
マーク・ストロング
ググ・バサ=ロー
アリソン・ピル
上映時間/132分
製作国/ アメリカ合衆国
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