『海賊とよばれた男』映画レビュー~「日本に勇気を与えた男の奇跡の実話」

 

writer/K・Kaz

 

 

今回は、公開中の映画『海賊とよばれた男』のレビューをおくらせていただきます(一部ネタバレあり)。

 

STORY

  1945年 敗戦直後の東京。

焼野原となった街の中で、かろうじて残っていた国岡商店のビルに集まった社員たちは、これから行われる店主(社長)国岡鐵造の言葉を、
「自分達は解雇される。今日はその宣告だろうか?」
と戦々恐々としながら待っていました。

しかし、店主の口から出たのは、
「誰一人解雇はしない」
「日本人は必ず立ち上がる。下を向いている暇はない!」
でした。

その言葉に、意気消沈していた社員たちは励まされ、生気を取り戻してゆくのでした。

  かつて、北九州の門司(もじ)で石油取り扱い業・国岡商店を始めた鐵造(てつぞう)でしたが、新参者という事もあり、他の業者から締め出されていました。

諦めきれない鐵造は、一計を案じ、船に油を積みこんで海に乗りだし、仲間内の縄張りを無視して、海上の漁船に直接売ると言う荒業に出ます。

安くて質のいい国岡商店の油は飛ぶように売れますが、同業者からは「海賊」と揶揄されるようになっていきます。

次に、満州での商売に目を付けた鐵造は、石油メジャーが満州鉄道に売り込んでいる機械油が寒すぎると凍ってしまう事を知って、極寒でも凍らない油を開発して、メジャーから仕事を奪おうとします。

結局、満州では、国岡の油は採用されなかったものの、メジャーに目を付けられるきっかけとなり、その後は上海に舞台を移して両社は熾烈な争いを繰り広げてゆきます。

しかし、敗戦となった途端に、国岡商店は取り扱う石油を失い、窮地に立たされます。

  敗戦後、石油が日本に入ってこない中、ラジオの修理や印刷業などをおこない、糊口をしのぎ、同業者が手を引いたGHQからの無理難題も、鐵造と社員の努力によってこなして、遂に石油の取り扱いを再開します。

しかし、石油メジャーは、傘下に入る事を拒む国岡商店を敵とみなし、息のかかったプラントからの石油の供給を断って潰しに掛かってきます。

1953年、最後の手段として、イギリスが海上封鎖をしているイランから石油を購入する事を決定します。
それはイギリス海軍にタンカーを拿捕されるかもしれず、船員達の命も危ない決断でした。

 

REVIEW

 

本作は、出光興産創業者の出光佐三氏の半生をモデルにした小説「海賊とよばれた男」の映画化です。

苦難や危機にあっても、その意欲を失わず、同業者から嫌われるほどの強引さと行動力で目の前の壁に立ち向かってゆく鐵造と社員たちの姿は、何処までも熱く、見ている方も気持ちが高ぶって仕方がありませんでした。

敗戦後でどん底状態の中、命さえもかける程にギラギラした国岡商店の社員達の意欲の根底にあったのは、ここで踏ん張ればそれが日本復活のきっかけになる、自分達が一度は失った誇りを取り戻すきっかけになると言う希望でした。

 「あぁ、こうまでして日本の明日と誇りを守ったくれた人々がいたんだな」
と只々嬉しく、誇らしい思いで胸が一杯でした。

  間違っても、ブラック企業の経営者や管理職がみて
「ほら見ろ!昔の人達は自分の命さえも差し出す思いで仕事に取り組んでいたんだぞ。それに比べて今の連中は情けない」
と社員を馬車馬のように働かせるための方便として解釈されたくはないです。

 本作品に出てくる国岡商店の社員達は、自分で決めた道に誇りを持ち、どんなに辛い時でも店主・国岡鐵造は、自分たちの頑張りを見ていてくれる、国岡の視線の先には輝かしい未来があって、自分達の頑張りがそれを実現させると信じていて、だからこそ限界以上に頑張れて、それが苦痛ではなく楽しいのです。

人を追い詰め、間違った罪悪感と責任感で人を限界まで働かせるブラック企業とはまるで別物です。

 「永遠の0」に続き、自信喪気味の日本人に活を入れてくれるような、骨太な作品でした。少し長めの作品ですが楽しめました。評価は星4.5とさせて頂きます。

 

K・Kazのこの映画の評価4,5

 

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4,5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆(星3) 69点~82点)

 

 

 

 

原作/『海賊とよばれた男』(百田尚樹/著)<第10回本屋大賞受賞作品>
製作国/日本
監督/山崎貴
公開/2016年12月10日
出演者/岡田准一
吉岡秀隆ほか
上映時間/145分

 


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writer/K・Kaz

 

 

 

 

 

 

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