『誰も知らない』CINEMA REVIEW~「お母さんは、絶対帰ってくる!」

 

writer/K・Kaz

 

 

 

STORY

 

 

 あるアパートに越してきたシングルマザー・けい子と長男の明。

 大家に案内されて部屋に入り、持って来た大きなトランクを開けると、そこから出てきたのは。次男の茂、次女のゆきでした。

 さらに、人目をしのんでやってきた長女・京子も合流し、家族5人の生活がはじまります。

 新しい家にはしゃぐ子供たち。
 けい子は、子どもたちに、
「大きな声で騒がない。お外に出ない」
 と約束をさせます。
 子供達4人はすべて父親が違い、明以外は出生届も出されていないので役所や大家に見つかると家族がバラバラにされるかもしれないと恐れているのです。
 子供たちは学校にもいかず、外出は夜だけ。ひっそりと息をひそめる生活です。そんな日々を、子供たちはまるでかくれんぼでもするように楽しみながら送っていました。
 しかし、けい子は突然、
「好きな人が出来た」
 と告白し、呆れ顔の明に、
「クリスマスまでには帰ってくるから」
 と言いのこし、姿を消してしまいます。

 

 残された子供たちは、けい子が残していった食料やたまに送られてくるお金をやりくりして暮らしますが、やがて送金も途ぎれ、お金も食料も底を突いてしまいます。

 電気・ガス・水道が止まっても、誰にも助けを求められない4人ですが、公園で不登校の中学生・紗希と知り合ったり、コンビニで廃棄する弁当を分けてもらったりして、いつか母親が帰ってくると信じ、その日その日を何とか乗り切って過ごします。

 しかし、明が、弟や妹たちのわがままに付き合いきれなくなって家を飛び出した時、思わぬ事態が起きてしまうのでした・・・。

 

 

 

REVIEW

 

 こんな過酷な状況の中でも、子供たちはずっと、ふたたび母親と一緒に暮らす日を夢見ているように思います。

 事情を知った沙希がお金を渡そうとしますが、それが道端で声をかけた中年オヤジとカラオケに行った報酬だと知ると途端に拒絶したのも、そんなお金に手を出したら罰があたって母親が二度と帰ってこないかもしれないと感じたからにも見えました。

 子供たちを取りまく大人は、誰もがどこか無責任で、自分のことで精一杯で、他を構う余裕や優しさがありません。

 だから、戸籍も親もない4人の子供たちは段々と生活が困窮し、薄汚れていっているのに、助けてくれるどころか気づいてさえくれません。

 少しおかしいと思っても、面倒ごとには関わりたくないのか、深く立ち入ってこようとしません。

 しかし、一日を精一杯生きる子どもたちの顔に、悲壮感や怒りはなく、時には笑っていたりもします。

 そんな表情を見ていると、子どもたちは、自分たちだけの世界の中で、自分たちだけのルールで生きていて、外から、
「これは悲しいことだ」
「これは腹立たしいことだ」
 と勝手に判断するのは、思い上がりなのかもしれないと思えてきて、悲しさでも怒りでもない、もっと奥の方にある感情の根っこをギュッと掴まれて、心全体を揺さぶられているような気分になりました。

 

 

  この作品は特に心に残っている映画の一つで、評価は星4.5とさせて頂きます。
タテタカコさんが歌うテーマソング「宝石」の、孤高で冷たく鋭い歌詞も、作品の雰囲気とよく合っていて、感動を更に高めてくれます。

 

 

K・Kazのこの映画の評価4.5

 

 

監督/是枝裕和
製作国/日本
公開/2004年
出演者/柳楽優弥
北浦愛
木村飛影
清水萌々子
YOU
上映時間/141分

 


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執筆者紹介

writer/K・Kaz

石川県在住の男性です。

週末には、映画を5~7本ペースで観ていらっしゃるそうです。

にゃんくがリクエストした映画は、ほぼ全部ご覧になっていらっしゃるという、すごい方です。

淀川長治さんが生きていれば、互角以上の戦いができるのは、きっとK・Kazさんだけでしょう。

 

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