『転生』にゃんく

転生

にゃんく

 どうして、こんなことになってしまったのだろう?
 場内には、たくさんのブタたちが並ばされている。間仕切りがなされているが、一頭ずつの間隔は、30センチも離されていないだろう。それほどの距離だから、話しかけたら、会話ができるくらいだ。
「痛いのは、イヤだね」
「殺すなら、お手柔らかに願いたいものだ」
「輪切りにして出荷するんなら、せめて麻酔をかけてほしいものだ」
「そんなことを言っている間に、もう次の次まで順番がきてるぜ」
「あんた、どうする?」
「どうするもこうするもないだろう。逃げることもできないんだから」
 ここは、養豚場。おれたちは、愛情もなく育てられたブタだ。まもなく、輪切りにされて、豚肉にされ、出荷されようとしている。新鮮な肉を待ちわびている4トントラックが、養豚場の入口に次々と横付けにされていることからもわかるとおり、待ったなしの状況だ。
 前世は人間だった。豚に生まれ変わった。それ相応の因果ということだろうか?
 オレがいったい何をしたというのだ? どんな因果で、このような運命になってしまったのだろう?  いったい誰がこんなことを決めてしまったのだろう? 決定したやつに会えるとするなら、エンドレスで説教をくらわせてやりたい。いくら弱肉強食だって言っても、これじゃあんまりヒドいじゃないか。

 おれだって、ブタとは言え、うまいものだって食いたいし、恋愛もしたいのだ。オレは、肉のかたまりか! ただ食べられるためだけに、この世に生まれてきたのか! そうじゃないだろう? そうじゃないと言ってくれ。
 そうこう言っているあいだに、さっき会話をかわしたお隣のブタさんまで順番が回ってきてしまった。最後の一瞥をかわした。とても、悲しそうな目をしていた。そいつは、殺される直前、軽く、
「ブヒー」
 と鳴き声をあげた。かわいそうだが、仕方がない。それも運命なのだ。心配するな、おれもすぐあとを追う。
 人間の男のおっさんが、持っていた大包丁で、隣のブタさんの脳天に一撃をくわえた。鮮血が飛び散った。
 それにしても、ブタだから、痛覚はだいぶ柔らいでいるのだろうか?
 そんなはずないか。隣のブタの、ものすごい叫び声が聞こえてきたのだから。
 せめて、すぐに転生して、すべてをゼロからやり直したい。そして、善行をつんで、二度とこのような状況に陥ることがないようにしたい。それだけが、今の希望だ。

(了)



『転生』にゃんく」への2件のフィードバック

  1. にゃんくさんの ぶたさんのイラストにひかれて、文章よみました。そうですよね。なんでまた ぶたに
    いきかえったのでしょう、ぶたさんたちは。。が しかたないのか、しゃぶしゃぶとなり、ああおいしい
    と たべられて幸せとなるみのうえ。。わたしは、前世はたべれれた、ぶたかなとかとおもったりします。
    が、わかりませんが。。にゃんくさん たくさん イラストかいてくださいね。イラストレターとかつかって、かかれたのでしょうか?もしそうでしたら、イラストレターの使い方 教えてください。すみません。

    1. コメントありがとうございます。
      このイラストは、ぼくが描いたイラストではなくて、イラストを自由につかってもよいですよっていうサイトがありまして、そこからお借りしています。
      自分でイラストも描ければよいのですが、なかなかそこまで手がまわらなくて。
      小説をたのしんで読んでいただいたようで、うれしいです。

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