『響―HIBIKI―』CINEMA REVIEW~「低迷する文学界に現れたのは、15歳の高校生だった――」

 

writer/K・Kaz

 

 
今回は邦画「響―HIBIKI―」を紹介したいと思います。

 

STORY

 

文芸雑誌「木蓮」編集部に一つの封書が届くところから物語は始まります。中には「木蓮」が募集している新人賞の応募作「お伽の庭」が入っていました。

 

本来、その作品は手書きで送り主の住所氏名も書かれていなかった為、応募規定違反で廃棄されるはずでした。しかし、その作品に目を停めた編集者の花井ふみはその内容の素晴らしさに驚嘆し、編集長に掛け合って選考に加えると同時に、応募者が誰か探し始めます。

 

その小説は、実は15歳の女子高生・鮎喰響によって書かれたものでした。文学に関する造形や思い入れは深いものの、作家デビューや名声には興味がなく平穏な日々を送ってゆくつもりでした。しかし、文芸部の先輩で、有名作家を父に持つ祖父江凛夏(そふえりんか)の家に遊びに行った際、偶然にも原稿を受け取りに来た花井と出くわし、「お伽の庭」の作者だと知られてしまいます。渋々ながらも新人賞受賞者として作家デビューした響でしたが、「お伽の庭」の素晴らしさや響の常識はずれな言動が世間を騒然とさせてゆくのでした。

 

 
REVIEW

作品中には様々な人が出てきます。過去の栄光にすがるベテラン作家、父親の威光ではなく自分の実力で作家デビューする事を夢見る女子高生、自称・天才の新人作家、実力がありながら日の目を見ない小説家。彼らは葛藤やコンプレックス、嫉妬心や焦りに苦しめられている真っ最中に響と言う天才に出会います。

 

響は文学を心から愛し、中途半端な文章を生み出す者や自分や文学を中傷する者には容赦しません。周りの制止も振り切り、相手を攻撃することも躊躇しません。その真っすぐな眼差しと言葉は、妥協も弱音もコンプレックスも、打算も忖度もくだらないプライドも突き抜け、粉砕して踏み越えて行ってしまいます。これまで悩みながら成長する人間臭い「天才」は映画や小説で数多く描かれてきました。しかし、この作品で描かれていたのは、比類なき才能を持って生まれ、周りに流されることなく自分の思う道を真っすぐ歩み、気が付けば周りが変わってゆく純粋最強の「天才」でした。その突き抜けっぷりは新鮮で「これこそ天才の姿だ!」と気持ちよくなりました。

 

 本作品の評価は星4とさせていただきます。映画初出演のアイドルが主演という先入観を持って見たのですが、大いに裏切られました。

 

K・Kazのこの映画の評価4

(本サイトでの、レーティング評価の定義)
☆☆☆☆☆(星5)93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5)92点
☆☆☆☆(星4)83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3)69点~79点

 

 

 

執筆者紹介

 

writer/K・Kaz

石川県在住の男性です。
週末には、映画を5~7本ペースで観ていらっしゃるそうです。

 

 

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