ホラ話その1

平政
魚の名前。江戸時代、小藩から大藩に婿入りした男が居た。傀儡の藩主として招かれ、大きな政には関わらせてもらえなかった。しかも、妻を含めた一族からは冷遇とまではいかないが軽んじられ、公務の際に大人しく居れば良いという扱いだった。
男は現状に絶望しつつも、屋敷内で書見を重ね、また優秀な藩士を見出し訪問を続け、領民の視察を続けた。
妻の一族は政に口出しさえしなければ特に男の行動は気にしなかったので、男は次第に屋敷に居ない日が増えていった。

領民との交流を重ねながら、ちょっとした作付けや漁法など意見交換を重ね、陳情を受けるようになり、小さな、本当に小さな事ではあるが、少しずつ治世に関わっていった。
妻の一族は世継ぎの事や、自分たちの贅沢にしか興味がなかったので藩士たちも少しずつ、お飾りの藩主についていった。

それから20有余年の時が流れ、妻の一族は自分たちがいつの間にかお飾りになっている事にも気付かず、実務的な政は全て解決の目処が立てられてから報告がなされるようになっていた。
藩は栄えた。

しかし、力そのものは妻の一族が強かった為、男の功績を讃える事は出来ず、男の死後、彼が好んで食べていたヒラマサという魚に漢字を当て、平政と記す事にした。

ホラ話その1」への2件のフィードバック

  1. 投稿するさいは、
    Kansen’ s story
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