小説レビュー『闘牛』井上靖


猟銃・闘牛 (新潮文庫)

 

 

writer/にゃんく

 

 

STORY(ネタバレあり)

 

 新聞社の編集長をやっている津上は、興行師の田代から持ちかけられて闘牛大会を催すことを決めます。
それに向けた準備に身も心もくたくたになります。
それと並行して、不倫相手のさき子とも、忙しさのためにあまり会えなくなります。終戦を迎えてそれほど時は経っておらず、津上は妻子を田舎に避難させたままになっていたのです。


 戦後一年かそこらで成り上がった会社の社長などが、闘牛大会開催の噂を聞きつけて、津上に闘牛大会の入場券を販売させてくれるよう頼んできたりしますが、津上たちはそれを断ります。

そして、闘牛大会本番の日を迎えますが…。

  *

 

 うまいこと伏線を張って、物語を盛り上げるテクニックはさすがだなあ、と思います。

 結局、闘牛大会を失敗に終わらせない選択肢もあるのに、津上は博打を打つ方向に走り、まんまと大失敗します。


 そして、観衆も闘牛大会に金銭を賭けている、社長も社運を賭けている、田代も生活を賭けている、さき子も津上との恋愛の成否を賭けている、なのに皆、失敗します。
ひとり賭けていなかったのは、主人公の津上だけだった、という感じでしょうか。

 ラスト、競技場の中をぐるぐる駆けている牛の姿が物哀しくていいです。芥川賞受賞作です。

 

 

 


猟銃・闘牛 (新潮文庫)

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