『春の雪』映画レビュー~「愛しあいながらも、永遠に引き裂かれる運命。」

 

今回は、美しすぎる、行定勲監督の映画『春の雪』(三島由紀夫原作)のレビューをお送りします。

 

writer/K・Kaz

 

STORY

 

時代は大正初期。
松枝侯爵の一人息子、清顕(きよあき)は容姿端麗、家柄も申し分のない自信家の青年。2つ年上の、綾倉伯爵家の一人娘、聡子(さとこ)とは、姉弟同然に育った仲です。
二人は互いに恋心を抱いていますが、あと一歩を踏み出せません。
ある日、聡子に突然の縁談が持ちあがります。お相手は、洞院宮治典王殿下。皇族です。
松枝家に密かな引け目を感じていた綾倉家は、渡りに船と縁談をドンドン進めてゆきます。聡子は驚き、自分の思いを綴った手紙を何通も書きますが、清顕は嫉妬のあまり、無視してしまいます。しかし、表面上は平静を装いながらも、聡子が手の届かないところに行ってしまうことに清顕は焦りを感じはじめます。
そして、これまでに送られてきた手紙を返す代わりにもう一度会う事を要求します。 それ以来2人は、誰にも知られてはならない禁断の関係に溺れてゆくのでした。

 


春の雪 [ 行定勲 ]

 

REVIEW

 

大正時代の上流階級を描いているので、とても華やかな作品です。
お互いに慕っているのに、華族ゆえの気位の高さなのでしょうか、二人はなかなか素直になれません。
一方が気持ちを伝えても、さまざまな理由でそれにこたえない、またはこたえることができません。もどかしくなってくるほどです。
その微妙な心の動きを、清顕役の妻夫木聡さんと聡子役の竹内結子さんが見事な演技で表現していました。
特に印象に残ったのは、清顕に、
「聡子に合わせないと、彼女からの手紙を公表して結婚話を台無しにしてやる!」
と脅されてオロオロする侍女に、
「仕方がありません。会うことにしましょう」
と言う時の聡子の表情です。「心ならずも」と言う顔をしながら、口元がニヤリと笑っていました。
「心の中では、聡子は清顕に会いたいんだな」
とわかるワンシーンで、女優さんというのはこんな表情ができるものなのかと驚きました。

 

この作品の評価は星3.5とさせて頂きます。
現代の恋愛映画に慣れ過ぎていると二人の関係がもどかしすぎて「お互いに好きって言えばいい話じゃないか!」と思ってしまう部分もありました。しかし、幼稚すぎる二人の想いが周囲の幸せまでも壊してゆく残酷さや儚さは印象的で、素晴らしく美しい映像とストーリーが心に残る作品でした。

 

 

K・Kazのこの映画の評価3.5

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3) 69点~79点

 

 

 

執筆者紹介

writer/K・Kaz

石川県在住の男性です。
週末には、映画を5~7本ペースで観ているそうです。

 

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