『MOON CHILD』CINEMA REVIEW~「僕たちは、いつも笑いながら、泣いていた。」

 

writer/K・Kaz

 

 

今回は邦画「MOON CHILD」を紹介したいと思います。(一部ネタバレあり)

 

STORY

 近未来、日本は経済崩壊し、多くの国民が移民となって海外に移住していました。アジアの片隅にある移民都市マレッパにもそんな人々が流れ込み、この街は人種のるつぼと化し、欲望と暴力の支配する無法地帯となっていました。

 日本人移民で、親のいない少年・ショウは兄の信士、仲間の孤児・トシともに盗みをして生きていました。
 ある日、マフィアが彼らを目ざわりに思い、からまれるというトラブルに遭います。もう少しで捕まる、というところで、謎の人物・ケイに助けられます。そして、ケイは捕まえたマフィアの血を飲みだします。ケイは人の血を飲みながら長い時を生きるヴァンパイアだったのです。

 その日以来、ケイはショウたちと行動を共にするようになります。
 ショウは、抗争で倒した敵の血をケイに提供し、ケイは不死身の体でショウを弾丸から守るというギブアンドテイクの関係を超えた友情で結ばれるようになり、マレッパでのし上がっていきます。

 ある日、ショウとケイは、台湾系マフィアの事務所に殴りこみに行きます。そこで、おなじように殴りこみに来た孫と共に戦うことになり、それをきっかけに彼らの間に友情が芽生えます。
 またショウは、孫の妹、イーチェを愛するようになり、これまでに味わったことの無い温かな愛に包まれた日々を送るようになります。

 しかし、そんな穏やかな時間は長くは続きませんでした。敵対組織にトシが射殺され、助けようとしたケイは、ヴァンパイアであることがばれて、姿を消します。
 さらに孫は、
「同じ台湾人だから」
と 、かつて襲撃したマフィア組織にくら替えし、ショウが作った組織と対立する関係になってしまいます。
 さらには、イーチェが病気で倒れ、娘を残して死んでしまいます。やがて繋がりを失ったショウと孫の組織の抗争は大きくなってゆきます。
 ついには、かつては背中合わせで、お互いを守りあった仲間同士が銃口を向け合うことになるのでした。

 

REVIEW

 

 両手にマグナムを握って飛び交う弾丸の中をくぐり抜けてゆく、派手なアクションが満載の作品です。しかし、何処か刹那的で、切ない雰囲気が漂っています。

 人よりはるかに長い時を生き続けるケイは、明日をも知れない毎日を生きるショウと共にいる時だけは生命を感じているように見えました。
 楽しい時には笑い合い、時には感情のままに喧嘩もしながら自由な時を過ごす彼らの姿は、血生臭い世界に浸かり切っているはずなのに、どこか清々しい青春映画のような感じもしました。
 それはやはりショウ役のGacktさんやケイ役のHYDEさんが持っている独特の雰囲気が、マレッパという混沌とした世界観にうまくマッチしているように思えました。

 

 本作品の評価は星3.5とさせていただきます。 

 

K・Kazのこの映画の評価3.5

(本サイトでの、レーティング評価の定義)
☆☆☆☆☆(星5)93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5)92点
☆☆☆☆(星4)83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3)69点~79点

 自由も仲間もいつか誰かに奪われ、全てが変わってゆく短い時の中を駆け抜けてゆくしかない男たち。
 そして、永い時の中で彼らと出会い、やがて別れなくてはいけない宿命を背負ったヴァンパイア。
 二つの相反する世界を生きる者達の哀愁がカッコよくて哀しい作品でした。

 
  

監督/瀬々敬久
製作国/日本
公開/2003年
上映時間/119分
キャスト/HYDE
Gackt
ワン・リーホン

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