『ネギ女』山城窓

ネギ女

 

 

 

文/山城窓

イラスト/東郷緑虎

 

 

 

 

ネギ女だ! ネギ女が現れた。もしあれがネギ女でないなら、女ネギだ! でもネギ女のほうがいいやすい。意味的にもネギ女のほうがぴんとくる。だからあれはネギ女だ。
ネギ女は上半身がネギだ。下半身はスカートを穿いている。だから女だと思う。でもスカートの下にレギンスを穿いている。女として邪道だ。しかも足にはパンプスを履いている。いろんなものを穿くのが女だ。やつらはきっと世界中のものを穿きつくす気だろう。そのとき世界は美しい音色を奏でる…いや、関係がない。すべて、はきつくしても、世界は変わらない。これ物の道理。
飛び掛ってきた! ネギ女が僕に向かってするどい出足で飛び掛ってきた。避ける間もない。噛み付いてきた。ネギ女が噛み付いてきた。どけよ、どけよ。でもダメだ。噛み付いたら離れない、すっぽんのようにシマウマのように。これネギ女の特性。
まずい、まずい。このままじゃ僕もネギ女になってしまう。どうせなら不味いネギにはなりたくない。あれ? 僕の場合もネギ女になるのかな? でもネギ男じゃ締まらない。ならネギ女になりたい。これ僕の気持ち。
あ、本当にどんどんネギになってきた。僕の上半身が緑色で、香り豊かになってきた。この香りはたまらない。すごく美味しそうだし、しかも体に良さそうだ。免疫力が上がってしまう! あ、これはいいことか。でも受け入れちゃいけないよ。だって僕がネギ女になったら、お母さんに怒られる。子供のくせになんていやらしいとかよくわからない非難を浴びせられるんだ。あれはなんだかいやだし、それ以上に恥ずかしいから僕はネギ女にならないんだ。今はまだその時じゃない。これ僕の実感。
でも違うのかな? 実は僕はもうネギ女になるころなのかな? 同じクラスの隼人君はもうネギ女になったって噂を聞いたな。個人差はあるんだろうな。だから僕も本当はネギ女になる時期なのかもしれないな。あ、だってもうだいぶ僕はネギくさい。
遅かれ早かれネギ女になるんであれば、さっさと済ませちゃったほうがいいかもしれないわね。そうよ、そうよ、思い切りが大事。女は度胸ってやつね! あらら、あたしもうネギ女になっちゃったんだ。なってみるとこんなものか。でも内心に自信がほとばしる。そういうものかもしれないわね。

 

 

(おしまい)

 

 

 

 

 

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