『年賀状』(山城窓/作)~ショートストーリー

 

山城窓

 

 

「これしきのことでくたばるまい!」とのたまいながらも、どうにかこうにか新年を迎えることになり、とりあえずはおめでとうございます。或いはこの賀状が届く頃にはあなたは挫けて挫けきって自害なさっているやもしれませんね。その時は行き違いになってしまったこの賀状は早々に処分してください。あくまでもこれはお祝いの言葉です。人の死にふさわしいものではありません。

 

こんなことを書いているうちに本当に気になってきました。あなたは生きておられますでしょうか? 本当に死んでたら洒落にも何にもなりません。あなたほどの方があれしきのことでくたばるとも思えないのですが、私には見えない、あなたの胸奥だけに押しとどめられた苦痛が私の思う以上のものであったならば私の推測などまるで見当違いということになるでしょう。その辺は当人であるあなたにしか解らないことです。いかがなものでしょう? 生きておられますでしょうか? 生きてるとしてどの程度活きておられますでしょうか? なるべく早いうちに新年会など開きその程を確認したいものです。

 

こんなことを言っていられるのも今のうちのことでしょうね。新年会の話は昨年も一昨年も出ましたが結局実現しませんでした。学生時代のようにはいかないようで、なかなか面子が揃いません。今年においてもそれは断言できます。絶対にその場に来られない者がいます。
「どうしてそんなことが断言できるのか?」

とあなたは思われるでしょうか? しかしその答えは簡単です。この年賀状が届く頃には私はもうこの世にいないからです。あれしきのことで死ぬことはないだろうと言われますか? しかしあなたは私が自分の胸奥だけに押しとどめた苦痛を知りません。私が自分で言うのもなんですが恐らくそれはあなたが思う以上のものだと思われます。
新年早々こんな年賀状を受け取って気分を悪くしていますか? しかしこれだけは解っていただきたい。私も晴れやかに穏やかに新しい年を迎えたかったのです。それに憧れさえしていたのです。そうです、憧れです。子供が憧れのスポーツ選手やアイドルの真似をするように、私も新年を気持ちよく迎える真似事をしたかったのです。それならそれでその真似事を最後まで通せば良かったのですが、現実に全く触れないまま終わることが度量の小さな私にはできませんでした。情けない限りです。

しかしながらもう全て過ぎたことです。私は既に死んでいます。私の死は昨年の話です。年は明けました。嫌なことはもう終わっているのです。そう考えれば何ともおめでたいことではないでしょうか? それでは最期にもう一度繰り返しておきます。明けましておめでとうございます。


〈おしまい〉

 

 

 

作者紹介

山城窓[L]

山城窓

1978年、大阪出身。男性。

第86回文学界新人賞最終候補

第41回文藝賞最終候補

第2回ダ・ヴィンチ文学賞最終候補

メフィスト賞の誌上座談会(メフィスト2009.VOL3)で応募作品が取り上げられる。
R-1ぐらんぷり2010 2回戦進出

小説作品に、『鏡痛の友人』『変性の”ハバエさん”』などがあります。

 

 

 

 

 

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