『聖の青春』CINEMA REVIEW~病と闘いながら将棋に全てを賭けた、わずか29年の生涯。

 

writer/K・Kaz

 

 

今回は、邦画『聖(さとし)の青春』のレビューをお届けします。

 

STORY

 

難病と闘いながら将棋に人生を賭け、29歳の若さで亡くなった棋士・村山聖(さとし)の生涯を描いた作品です。
幼い頃から腎臓の難病・腎ネフローゼを患い、入退院を繰り返した村山聖は、入院中に何気なく父から勧められた将棋に心を奪われます。
両親の反対を押し切り大阪でプロとなり、やがて羽生善治ら同世代のライバル棋士たちと死闘を繰り広げ、まさに命を削りながら将棋を指した村山聖の壮絶な一生が描かれています。

 

 


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REVIEW

この作品の見所は、何と言っても羽生善治と村山聖の対決です。
大阪で勝ち続けて敵がいなくなった村山は、ある時対戦した羽生を自分のライバルと決め、彼と勝負するために東京へ拠点を移します。
村山の羽生へのライバル心は強く「羽生さんとの対局は20勝分の価値がある」と語ったり、ほかの相手との対局中にもかかわらず隣の羽生の対局に気持ちが集中してしまっています。
ある対局で村山が羽生に勝った夜、村山は羽生を誘って飲みに出ます。憧れの羽生を前に何とか話を合わせようと
「少女マンガは好きですか?」
「競馬はやりますか?」
「麻雀は?」
と聞きますが、羽生は、
「知らないです」
「やらないですね」
と苦笑いをするばかり。しかし、最後にポツリと
「今日、私はあなたに負けて死んでしまいたいほど悔しい」
と言います。
まったく趣味の合わない二人ですが、将棋に対する思いだけは同じ位熱いものを持っていたんだなと思いました。
村山聖は自分に先がないという思いから、一心不乱に打ち込める物を求め、たまたま出会ったのが将棋だったように思えました。もし出会うものが違っていれば、絵や小説、音楽でも彼は有名になっていたかもしれません。
対して羽生善治は、強迫観念に背中を押されなくても、普通の生活をしていてそれが将棋に繫がってゆく様な正に「天才」で、将棋の才能を持った人間が出会うべきものに出会い、他の事には一切目もくれず、思う存分に自分の得意分野で能力を開花させた人物だったのではないでしょうか。
もうひとつ「おやっ」と思ったのは、村山が雑誌のアンケートに回答するシーンで
「神様に一つだけ願うとしたら」
という質問の答えが
「神様削除」
だったことです。
自分に重荷ばかり背負わせる神様なんて要らない、ともとれますし、自分が紙のように思っている羽生善治をいつかその座から引き摺り下ろしてやりたいと思っている、とも考えられる興味深い回答でした。
村山は将棋のほかにも少女マンガが好きで、難病を患っているにも拘らず酒や麻雀で体を酷使したりもします。意固地で、自分の考えを押し付けたり、他人を拒絶しようとしたりして周りと衝突することもしばしばでした。しかし、何とかこの世に生きた証を残そうともがき、周りも彼を暖かく支えてくれて、将棋に命がけで没頭する姿は心を打ちました。
羽生は今も将棋の世界のトップです。天才は、命を削って立ち向かってくる者も倒し、踏み越えて更に上にゆく者なのだとも思いました。

 

村山聖役の松山ケンイチさん、羽生善治役の東出昌大さんの役作りがすばらしく、本人を見ているようで感情移入しやすかったです。

 

今回の作品は星4つとしたいと思います。

 

 

K・Kazのこの映画の評価4

 

(本サイトでの、レーティング評価の定義)
☆☆☆☆☆(星5)93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5)92点
☆☆☆☆(星4)83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3)69点~79点

 

 

 

執筆者紹介

writer/K・Kaz

石川県在住の男性です。
週末には、映画を5~7本ペースで観ていらっしゃるそうです。

 

 

主演/松山ケンイチ、東出昌大、リリー・フランキー
公開/2016年11月19日
監督/森義隆
原作/大崎善生

 

 


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