『少女』映画レビュー~「見てみたいんだよね、誰かが死ぬとこ」

 

writer/K・Kaz

 

STORY

 

由紀は、高校2年生。読書が好きで、授業中でも小説を書いています。
一方、敦子は、由紀のクラスメイト。
敦子は、剣道の推薦で入学したものの、大会での失敗が原因でいじめられるようになります。いじめがひどくなりすぎて倒れた敦子を、
「暗闇の中を一人で歩いている気分かもしれないけれど、そんなことはないから」
と由紀が励ましたことがきっかけで、二人は親友となります。

 

ある日、転校生・柴織が、
「以前、友達の死体を見た」
と話すのを聞いて以来、二人は、自分も人の死を目撃してみたいと思うようになってゆきます。
そして、とうとう由紀は、小児科病棟でボランティアをはじめ、余命わずかな少年たちと仲良くなって、
「人の死を目撃してみたい」
という自らの欲望を満たそうとします。

 

一方、陰湿ないじめに遭い、生きる希望を失いかけていた敦子は、誰かの死を見れば生きる勇気を取り戻せるのではないかと考え、老人ホームでボランティアをするようになります。
しかし、二人の思惑とは別に、由紀は段々と子供と心を通わせはじめ、敦子は喉を詰まらせて死にかけた老人をとっさに助けてしまいます。はたして、彼女たちは願い通り死を目の当たりにする事が出来るのでしょうか?

 

 

REVIEW

 

主人公の二人は、女子高という世界の中で、息苦しい毎日を送っています。
由紀は認知症の祖母のせいで、敦子は周りからの期待のせいで、家さえ安息の場所ではありません
そして、周りの悪意や理不尽な出来事に傷つく二人もまた、純真無垢ではありません。由紀は、書き続けていた小説を遂に完成させたのですが、直後にその原稿が盗まれ、国語教師・小倉の名前で発表され、新人賞まで取ったことを知ります。
その事を知って怒り狂った由紀は復讐を企て、小倉は学校から姿を消します。
一方、敦子は新しく友達になった紫織にそそのかされて、気の弱そうなサラリーマンに痴漢の濡れ衣を着せて金を脅し取る片棒を担がされ、口外しない事を強要されます。

 

 

しかし、どちらも段々と罪の意識に押し潰されそうになってゆき、何とかしようともがく内、事態は二人が予想しなかった展開を見せます。
本作は登場人物がそれぞれ意外な所で繋がっており、見ごたえのあるサスペンスでした。
息苦しい世界からの脱出手段として「死」にあこがれを抱くのは、この年頃の子にはよくある事の様に思います。

 

しかし、実際に死を目の前にすると、二人ともあまりの事にとても耐え切れずに絶叫してしまいます。それは「死」へのあこがれは、幼さゆえにその恐ろしさにまで想像が至らなかった為だったのではないでしょうか。死に近づこうとしてもがき続け、遂には自分を取り巻く世界の壁を打ち破り、その外にももっと広い場所がある事を知り、全てだと思っていたこれまでの自分の世界の小ささを知って、由紀と敦子は少女から大人の女性への階段を昇り始めたように思いました。
そして、自分の世界を受け入れられずに他人への憧れが強くなりすぎたり、達観した気になって世の中をなめてかかったりした者は容赦なくその代償を払う羽目になり、あっという間に破滅してしまいます。そのダークな展開が面白い映画でもありました。

 

 

K・Kazのこの映画の評価3.5

 

(本サイトでの、レーティング評価の定義)
☆☆☆☆☆(星5)93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5)92点
☆☆☆☆(星4)83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3)69点~79点

 

『少女』は、2016年10月8日公開の日本映画。
監督は三島有紀子
原作/湊かなえ「少女」

 


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執筆者紹介

writer/K・Kaz

 
石川県在住の男性です。
週末には、映画を5~7本ペースで観ていらっしゃるそうです。

 

 

 

 

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