『僕が18歳でバーテンダーをしていた時の、地元で有名なお客さんの魔女のお話』一条響(ぺこ)

 

 

僕が18歳でバーテンダーをしていた時の、地元で有名なお客さんの魔女のお話

 

 

一条響(ぺこ)

 

 

 18歳で初めてアルバイトを始めました。まだ電卓すら使ったことのない僕でしたが、どうせやるなら女の子に「キャッキャ」「ウフフ」がありそうな仕事がいいなと思いバーテンダーになりました。

 

 18歳ということもあり、「若いねぇ」と会うお姉様方に、体をベタベタ触られた記憶があります。

 

 嫌だった反面、ちょっと喜んでいる自分もいました。

 

 そのお店には、通称「魔女」と呼ばれる常連さんがいました。この人がどうして魔女と言われているのかと言ったら、年齢と見た目がかけ離れているので魔女と言われていました。

 

 当時、40歳の彼女でしたが、18歳の僕には25ぐらいに見えました。何度「今晩、ご調教よろしくお願いいたします。」って言おうと思ったかわかりません。それぐらい美人でした。

 

 そんな彼女は、ある日とても酔っ払っていました。僕はカウンターの内側でグラスを拭きながら、その魔女の前に立っていました。魔女は、僕に相談があると言ってきました。

 

 そして、誰にも言いたくないからと言う雰囲気で、耳をこちらに寄せろと言うジェスチャーをしてきました。カウンターを挟みながら、耳を魔女の方に近づけました。

 そしたら、「ジュワ〜」と耳が熱くなりました。「あっ」思わず口から出ました。魔女が僕の耳をハムハムしたのです。そのとき、確か僕は魔法使い見習い(童○)でそう言うことがあんまりわからなかったので、かなり興奮して赤くなってしまいました。

 それからしばらく仕事をしながら、とろ〜んとした目で僕のことを見てきました。

 もしかして、「俺、狙われている?」と思いました。

 ただ、どうも今日の魔女は普段では考えられないほど酔っ払っているようでした。

 

 もう26時です。

 そろそろラストオーダーを取ろうという時間になってきました。魔女は無言で席を立ち、ヨタヨタしながらトイレに行きました。

 トイレに行った際にかすかに聞こえる水の音がしたような気はしました。魔女が全然出てきません。どうしたのでしょうか。

 当時、一番若かった僕が見に行くことになりました。

 そしたら、トイレの洗面所で座っている魔女がいました。

 なんだ、疲れて寝てしまったのか。そう思って、一歩踏み出したら、「ポチャッ」と言う音が聞こえました。

 なんだろうと思って、下を見たら透明な水がありました。しかし、この水は独特のアンモニア臭がしました。

 そうです。しちゃったんです。

  魔女の秘伝のお小水がそこにはありました。

 とりあえず、魔女を起こして、当時一番下っ端だった僕は一生懸命拭きました。

 僕は、そういう汚い系のものがとっても苦手なので、本当に嫌でした。

 こんなに美しい女性でも、こういうもの出してしまうんだって思いました。

 何度か「これは魔女になるための媚薬だ」とかポジティブになるように言い聞かせましたが、気持ち悪かったです。

 その後、魔女は変わらず常連さんだったので毎週話しました。

 そのときの記憶はあまり覚えていないそうです。

 相変わらず僕に色目を使ってくるのですが、どれだけ綺麗でも、目が会うたびに僕はあのアンモニアを思い出してしまいました。

 あの事件から、「今晩、ご調教よろしくお願いいたします。」とかそういう言葉は出なくなりました。

 我慢しないでトイレに行くことって、当たり前ですけど大事なことだと思いました。

 

 

 おしまい

 

 

 

 

執筆者紹介

 

一条響(ぺこ)

 

元銀座バーテンダーです。

 

 

 

 

 

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