我が子の成長
にゃんく
顔を蒸気させながら、カケル君が小走りに走ってきた。
「パパ、ぼく一人で、できるようになったんだ!」
パパが大きく両手を広げると、カケル君は胸のなかに飛び込んできた。パパは思わずよろめいた。息子はもう8歳になるのだ。背はぐんぐん伸びているし、体重だって、日増しに重くなっている。さすがに、ひと昔前のように、高い高いはできなかった。いつまでも子どもだと思っていたのに。
日をおうごとに、息子は立派に成長しているのだ。
我が子を、いとおしく見つめるパパの姿がそこにはある。
乾いた風が吹いていた。平和な日常のヒトコマである。
「それで、カケル、いったい何ができるようになったんだい?」
おもむろにパパが訊ねた。すると、目を輝かしながら、カケル君は答えた。
「ライフルで通行人を撃ち殺すことだよ。今日は、十発撃って、十発命中だった!」
ひび割れた崖のむこうには、野ざらしの旅人たちの遺体が、無惨に風に吹かれていた。
我が子を見つめなおしたパパの視線に、いちまつの陰りがみえた。
(了)
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