『あん』CINEMA REVIEW~「世間の無理解に押しつぶされてしまう時があります。」


 

writer/K・Kaz

 

今回は、邦画『あん』のレビューをおとどけします。
『萌の朱雀』で、カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を史上最年少受賞した河瀬直美が監督した作品です。

まずは、映画『あん』のストーリーからご紹介します。

 

STORY

 

ある日、ちいさなどら焼き屋「どら春」の雇われ店長をしている千太郎のところに、この店で働きたいという老女・徳江がやってきます。

最初は断っていた千太郎でしたが、余りにしつこく頼む徳江に根負けして雇うことにします。徳江が作った粒あんをどら焼きに使いはじめると、その味が評判となって店は繁盛しはじめます。徳江の純粋でゆったりとした人柄に触れるうちにすっかり打ち解け、千太郎や近所に住む中学生・ワカナは自分の過去や悩みを話すようになってゆきます。しかし、徳江がハンセン氏病を患っていた過去が何処からか漏れ、客足が急に遠のいてゆきます。

店の事を思って姿を見せなくなってしまった徳江を心配して、千太郎とワカナは徳江が住んでいる施設に向かうのでした……。

 

 


あん DVD スタンダード・エディション

 

 

REVIEW

 

徳江の少女のような純粋さ、明るさ、あんこを作る時に使う小豆への愛情は名優・樹木希林さんにしか出せない味だと思いました。
徳江との出会いによって、人に言えない過去を引きずる千太郎は、おいしいどら焼きをつくることにやりがいを見出し、母との二人暮らしに息苦しさを感じているワカナは心を開くことの出来る相手を見つけ、日常が彩を持ち始める様子が穏やかに描かれています。
しかし、「どら春」のオーナーやワカナの母親は、徳江がハンセン氏病だったことを知ったとたんに、彼女を遠ざけようとしはじめます。

 

言いふらして回ったのか客足も急に途絶えます。周りの無理解によって3人の静かで幸せな生活が終わらされてしまうのが悲しく、胸に刺さりました。
お客が減ったのは自分のせいだと知って店を去るとき、徳江の胸の中にはどんな思いがあったのだろうかと考えてしまわずにいられません。自分のせいで迷惑をかけてしまったと言う申し訳無さでしょうか?
「また、ここでも排斥されるのか……」
と言う悔しさでしょうか?

 

多くを語らなかったことが余計に切なさを掻き立てます。
また、徳江がどら焼き屋にやってくるのは桜が咲く頃です。話と共に季節も移り変わってゆきます。そんな、四季の美しさも盛り込まれている色彩豊かな作品でもあります。

 

本作品の評価は星4つとさせていただきます。静かですが、美しく心に染みる作品です。

K・Kazのこの映画の評価4

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4.5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆★(星3.5)80点~82点
☆☆☆(星3) 69点~79点

 

 

 

監督/河瀬直美
製作国/日本
公開/2015年5月 (日本)
出演者/ 樹木希林
永瀬正敏
内田伽羅
原作/ドリアン助川『あん』

 

 

 

執筆者紹介

 

K・Kaz

 
石川県在住の男性です。
週末には、映画を5~7本ペースで観ていらっしゃるそうです。
にゃんくがリクエストした映画は、ほぼ全部ご覧になっていらっしゃるという、すごい方です。
淀川長治さんが生きていれば、互角以上の戦いができるのは、きっとK・Kazさんだけでしょう。
 

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です