『雪国でダイブ』kansen22

 

雪国でダイブ 

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私が中学生の時の話です。
私は雪国の生まれで、中学校には登下校の困難な生徒の為に寄宿舎がある程の山奥で、雪深いという言葉が本当に似合う場所でした。

そんな山奥で迎えた中学三年の冬でした。
受験を控え、皆浮き足立っていたのを覚えています。
そんなある日、自習の時間がありました。特に監督する教師もおらず、真面目に勉強する者、居眠りを始める者、騒いで隣の教室から苦情を呼び寄せる者。
てんでバラバラに自習時間を過ごしていました。

何度か隣の教室から苦情を頂いてしまい、皆が無言、または小声で会話をしていました。
そんな時、数人が立ち上がりました。クラスでも目立った存在の、いわゆるムードメーカーと呼べるグループです。
彼らはおもむろに窓を開けると、その身を宙に踊らせました。あまりにも突然過ぎて、私は呆気に取られてしまいました。
いくら、浮き足立っているからとは言え、本当に飛ばなくても良いのに。とか、洗濯どうするんだろう、とか何気なく思ったのを覚えています。

雪深い地域ですので、彼らは雪に飛び込んだ形です。窓の外には、彼らの人型が残されています。
窓の中は、笑いを噛み締めるクラスメイトが残され、私もそちら側の一人でした。
いくら怪我の心配はないとは言え、万が一を考えると自分には真似出来ません。

少し羨ましいな、と思いながら眺めていましたが、彼らは窓からは戻らず校舎を回り込んだ場所にある通用口から帰ってくる考えのようでした。

しばし経ち。
彼らは職員室に連行された、と様子を見に来た教師に伝えられました。
さもありなん。

後に詳しい話を聞いたところ、彼らは二階の空き教室の窓を開けたところで御用になった次第であります。

何故こんな事をしたのか、と教師に聞かれた答えが

「より高みを目指して」

いや、違うだろ!

何故雪に「飛び込んだのか」という質問だよ?!︎
何故「二階に昇ったか」じゃないよ!?︎

あまりにも的を外してるよね。
遥か彼方に答えがぶっ飛んでるわ。

しかし、「受験生として高みを目指すのは悪くない」という教師の返答。

一周回って通じちゃった!
先生も、大事なのそこじゃないって理解してるかな!?︎
的外れに見当外れで逆に噛み合っちゃったよ!
何その奇跡のマリアージュ!

顛末を聞いたが故に突っ込まざるを得ず。
結局うるさいと私も怒られる羽目になりました。

 

 

おしまい

 

 

作者紹介


kansen22

某スーパーの鮮魚チーフとして働く35歳。
新米パパとしても奮闘中。
スーパー店員としての経験を活かします。

体育会系の体格ですが、高校、大学と文芸部に所属もしていました。
ちょっとした文章も書きます。

 

 

 

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