『オレオレ詐欺とおじいちゃん』さくらいづる

オレオレ詐欺とおじいちゃん

さくらいづる

 今は少し下火になってきていますが、オレオレ詐欺、一時期全国でありましたよね。お年寄りを狙った詐欺電話、うちの祖父のところにもかかってきました。
 ほとんどがお年寄りのみの世帯である田舎なので、名簿か電話帳を使ってかけてきたのかもしれません。留守番中の祖父が電話をとるといきなり、
「おじいちゃん、僕だよ」。
「おお、○○くんか」
 と、しばらく帰省していない私の従弟の名前を出すおじいちゃん。
 相手は、「そうだよ」と便乗してさっそくお金の話をしだしたそうですが、祖父は少し考えて、「○○くん、もうちょっとなまっとったんちゃうか」。そのとたん、相手は電話を切ったそうです。

 それからしばらくして、オレオレ詐欺が少し治まってきたころ、祖父の家にまた電話がありました。「俺だよ、俺」という男性の声に「××くんか」とうっかり名前を出した祖父。
 ××くんというのは私の従兄ですが、起業しては失敗したり、いつもふらふらしていてしばらく帰ってきていない人です。
「そうだよ、おじいちゃん。俺さ、会社で横領しちゃって、たいへんなことになってさ」
 と、××くんに成りすまして、もっともらしくお金の無心を始めた電話の相手。
 しかし、××くんには前から言いたいことがあったらしい祖父、少しお酒が入っていたこともあって、お説教しだしたそうです。
「おまえのお母さんも心配しとるんぞ、横領とかいうてどうせまたパチンコしよったんちゃうんか」
 しまいには、中学生の頃の成績や、漢字が書けなかった話まで持ち出して、話は一時間以上に及びました。
 母が帰宅したとき、酔っぱらった祖父が「彦左衛門の彦!」と、なぜか彦左衛門について電話相手にえんえん説明していたそうで(*注1)、慌てて電話を変わると「すみません」とぷつっと切れたとか。

 あとで話を聞いたら、「××には説教しておいてやったわ」
 と得意げな祖父。
 しかし後日、その××くんは海外で屋台の仕事をやっているらしいと従妹に聞かされ、「あれって詐欺だったのでは」
 と家族一同、しーんとなった次第です。

 それにしても、人違いされた上酔っ払いにさんざんお説教されて、一円もとれなかった詐欺のひと…、悪いことをしようとしたとはいえ、ちょっとお気の毒ですね。

 

おしまい

 

 

*注1
 この「彦左衛門」というのは、大久保彦左衛門という歴史上の人物らしいです。
 コールセンターで働いていても、お年寄りの大半が自分の名前を説明するとき「彦左衛門の彦!」というのですが、ぜんぜんぴんとこない人物なんですよね。。。
 お年寄りの間でだけ有名な歴史上人物なのかもしれません。

 

 

 

執筆者紹介 

さくらいづる

星座占いなどの記事も書いているライターです。

 

 

 

 

↓「like」ボタンのクリックお願いしますm(_ _)m

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です