kansen22
これは私の友人である中西くんが体験した話です。
中西くんは大学時代、いわゆる学生街に住んでいました。
大学の周辺にはアパートが沢山あり、多くの学生たちが一人暮らしをしていました。
中西くんも、そんな一人でした。
ある晴れた日、中西くんは、街を歩いていました。
前日まで太陽は姿をひそめ、気分も晴れない天気がつづいていたせいか、あちこちで洗濯物が風に揺れている光景が広がっていました。
そういう中西くんも、久しぶりの晴天に洗濯物を泳がせようと考えていたのですが、うっかり洗剤を切らしてしまい、買い物に向かっていたのです。
そんな時、突然一人の青年が、顔を真っ赤にして道路に飛びだして来ました。
見るからに体育会系の体格です。
見るからに、威圧感のある強面の青年でした。
良く見ると、それは、中西くんの友人でした。
その外見から、子どもと目が合うだけで泣かれてしまうという筋金入りの怖さです。
そんな友人が、必死の形相を浮かべているのですから、子どもどころか、彼を知らない者なら大人でも避けていきそうです。
実際、誰なのか気づかなければ、中西くんも回れ右をしたかもしれません。
そんな鬼と化した友人の前方に、何かが舞っています。
布のような物体でした。
よくよく目を凝らして見ると、それはトランクスでした。
それも、赤と白のコントラストが非常に派手なものです。たれぱんだのトランクスでした。
そんな可愛らしい下着を、鬼が追いかけています。
「鬼〜のパンツは良いパンツ〜♪ つよいぞ つよいぞ♪」
思わず、頭の中にメロディが流れます。
そのギャップの激しい光景に、中西くんは、笑いをこらえきれませんでした。
それが、私の友人である中西くんが経験した話です。
ちなみに、そのトランクスを追いかけていた友人は。私自身でした。
心から恥ずかしい経験でした。
作者紹介
某スーパーの鮮魚チーフとして働く35歳。
新米パパとしても奮闘中。
スーパー店員としての経験を活かします。
体育会系の体格ですが、高校、大学と文芸部に所属もしていました。
ちょっとした文章も書きます。