『沈黙~サイレンス~』~「信徒にくわえられる凄惨な拷問……神よ、あなたはいつまで沈黙されるのか?

 

writer/K・Kaz

 

今回紹介する映画は、先週末公開されたばかりの洋画『沈黙~サイレンス~』です。
『沈黙~サイレンス~』は、遠藤周作の小説『沈黙』を原作としています。
また、日本人俳優・窪塚 洋介が出演していることでも話題の映画です。
話題性抜群、最近の注目作です。
見ない理由が見あたらない!
まずは、『沈黙~サイレンス~』のストーリー紹介から。

 

STORY

 

17世紀、日本ではキリスト教が禁じられています。
日本で布教を続けていた宣教師・フェレイラが棄教したとの知らせが、ポルトガルに届きます。
事の真相を確かめるため、フェレイラの弟子で若き宣教師のロドリゴとガルペは、日本を目ざし旅だちます。
2人は、旅の途上のマカオで出会ったキチジローという日本人を案内役に、やがて長崎・五島へとたどり着きます。
そこで二人が出会ったのは、厳しい生活の中でキリスト教を支えに生きる村人と、奉行・井上による想像を絶する厳しい弾圧でした。
そして、探し求めていたフェレイラが棄教して、日本名までもらって長崎で暮らしているとの噂を聞き心が揺れ動きます。
一方で、村人に温かく迎えられ、ロドリゴとガルペは司教として必要とされる喜びや、キリスト教の存在意義を感じるようになってゆきます。
しかし二人の存在は奉行の知るところとなり、村ぐるみの執拗な追及が始まるのでした……。

 

REVIEW

 

偉大だった師の心変りが信じられず、真相を確かめようとする、情熱的な宣教師たちの前に突きつけられたのは、過酷な弾圧でした。
はじめは神の存在と救いを信じて疑わなかったロドリゴとガルベも、
「どうしてこんなひどい事を目の前にして神は沈黙しているのだろうか?」
と疑問を抱きはじめます。
そう思ってしまうのも無理がないと思えるほど、熱湯を体に浴びせ続けたり、生きたまま火あぶりにしたりと、人の精神と肉体の限界を超えるような拷問を目の前で見せる一方で、
「お前たちが憎いわけではない」
「キリスト教を捨てさえすればすぐに楽になる」
と囁いて心をへし折ってゆく様子は衝撃的でした。
脇を固める人物たちも個性的で、敬虔なキリスト教徒であるといいながら、何度も裏切りを繰り返して、その度に
「仕方がなかった」
と懺悔をして許されようとするキチジローや、口調はあくまで穏やかだが、隙間なく巧妙に隠れキリシタンを追い詰めてゆく奉行など、嫌悪感を抱きながら人の弱さや自分を守りたいという気持ち、自分の信念に歯向かう者を消し去りたいと思う願望を象徴しているようでした。
息をひそめ続ける宣教師や貧しい隠れキリシタン達はじっと下を向いて口を結び沈黙し続けていたのに対し、キチジローや奉行は、ことあるごとによく喋っていたのも印象的でした。

様々な出来事があり、ロドリゴは日本に住みつづける道を選びます。
唯一、近くに居つづけて、心情を分かち合っているようにも見えるキチジローにも胸の内を語ることは無くなり、沈黙を守り通します。

タイトルの「沈黙」は、ひどい弾圧を傍観する神か、キリシタンである事を隠し続ける村人か、心の内を明かさなかったロドリゴなのか、見る人によって幾つもの意味にとれると思いました。
マーティン・スコセッシ監督が、長い構想の末に映画化しただけに、自分の心の中を探りながら見てしまうような、荘厳で迫力のある作品でした。

 

評価は星3.5とさせて頂きます。

 

上映時間170分と長くテーマも重いので見るのは精神力と体力が要りますが、価値はあると思います。

監督/マーティン・スコセッシ
原作/遠藤周作
出演者/リーアム・ニーソン
アンドリュー・ガーフィールド
アダム・ドライバー
窪塚 洋介
公開/2017年
上映時間/2時間 41分
製作国/アメリカ

 

writer/K・Kaz

 


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