小説『777』ー⑦ー にゃんく

777

ー⑦ー

 

 

 

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

 

 

カケル君という不思議な力をもった人を失って、みっくんは少しずつ崖のほうへ追いつめられるような窮地におちいりつつあることを感じている。しかしそれでも彼は、スロット通いをやめることまではしない。

たしかにカケル君は、出る台出ない台を見極める力を持っていた。低設定と思われる台からメダルを引き出す能力を持っていた。でも自分勝手というか、何を思っているか理解できないところが多かった。長く一緒にやっていければ、いいコンビになれたのにそれを思うと残念であった。そして最後の別れで彼が呟いた一連の言葉、「あの店には、魔物がいる」だとか、「やつら」という言葉について、それがいったい誰であるのか、実在する人物であればそれをもっと詳しく本人から聞いてみたい気持ちがしたが、いずれにせよ、みっくんには差し迫った危険やそれらしい具体的な出来事が全く伴われていなかったために、カケル君の頭のなかでただ繰り広げられている妄想以上の何物にも思われなかった。

非番に寮の食道で夕食のカレーを食べながら、久し振りにテレビを見た。小泉首相の郵政民営化法案が参議院で否決されたニュースが流れていた。

 

みっくんは、休みの日はほとんどをスロットに行くか、ミミラに逢うことに費やしていたから、テレビもあまり見ず、新聞にも目を通していなかった。だから世の中で何が今おこなわれているのかわからず、どんなニュースを見ても、別に「ふうん」という感想しか抱かなかった。どのニュースにどんな意味があるのかということも、ほとんど眼中になかった。興味があるのは、ミミラに「秘密を実行してもらうこと」と、スロットでどれだけ勝てるかだった。ミミラに「秘密を実行してもらうこと」とスロットで勝つことの昂奮から比べれば、それ以外のどんな出来事も、みっくんにはひどく色褪せて、興味をもてないものにしか映らなかった。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

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執筆者紹介

 

にゃんく

 

にゃんころがりmagazine編集長。
X JAPANのファン。カレーも大好き。

 

 

 

 

 

 

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