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にゃんく
世間は赤と緑に彩られていた。
クリスマスの季節にさしかかっていた。ミミラと逢えば金を使う。そう思ってみっくんは、その頃からしばらくミミラに連絡をとらないようにしようと思った。さすがに、みっくんにも、ここらでブレーキをかけねば悪事が露見するという危機感があった。
今引き返さねば。破滅は目の前に迫っている気がした。
警察官が横領行為。
署長が訓授場で署員に訓辞する。その話が、みっくんのことを念頭において話しているように聞こえてならなかった。
法をまもるべき警察官が犯罪行為に手を染めている。
早く金を取り戻さねば。そう焦ってはみても、肝心のスロットで、いつも収支はマイナスになるばかりだった。
毎日スロット機に向かい、黙々とレバーを叩く。食事もとらず、同じ動作を飽きることなく繰り返していると、自分が断食している修行僧のように思えてくる。
スロットを打つことは生きることに似ている。
毎日台の椅子に腰かけて勝ったり負けたり。
他の誰かが勝つと必然的にこちらが負ける。自分が勝つと他の誰かが負けている。時には隣の台の親切な人に助けられることもある。誰かを出し抜くために、眈々とホールに目を光らせる。席が空いた瞬間に、ハイエナのように獲物を奪う。
スロット店は、人生という台が並ぶ巨大な闇だ。
闇である店はいつも利益をあげている。負けることはない。
スロットを打つことと同じで、所詮我々の人生は、現実を生きる我々は、仕組まれたこの巨大な闇の世界で、お互い争うように仕向けられているだけではないか。
最後には、ひとりの勝者ものこらない。
残るのは、累々たる廃人ばかり。
みっくんには、廃人になった自分の姿が見えるようだった。
つづく
執筆者紹介
にゃんく
にゃんころがりmagazine編集長。
X JAPANのファン。カレーも大好き。
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